トランプ再選で、トランスジェンダーの権利はどうなる?──連載:松岡宗嗣の時事コラム
逆風に備える
トランプの再選によって、性的マイノリティ、特にトランスジェンダーやノンバイナリーの人々の権利保障は大きな逆風を受けることになる。 トランスバッシング言説の中には、「子どもを性別適合手術へと誘導しようとしている」「子どもがグルーミング(性的な手なづけ)される」といったものがあるが、こうした陰謀論や不安の煽動は歴史的に何度も繰り返されてきた。 1970年代、歌手のアニタ・ブライアントは「SAVE OUR CHILDREN」という団体を立ちあげ、同性愛者の権利保障に反対した。その際用いられたのが「子どもが同性愛に誘導される」「子どもが性的虐待の被害にあう」というものだった。いま同じ言説を広げようとしても、多くの人はこの論理がいかに破綻しているかが理解できるだろう。 長い時間軸で捉えると、性的マイノリティの権利保障は進んできている。しかし、今この瞬間を生きる当事者とって、バッシングの嵐は命や生活に関わる喫緊の問題だ。トランスジェンダーやノンバイナリーの人々に向けられる逆風、その一つひとつの動きに国際的に連携し備えていくことが求められる。
松岡宗嗣(まつおか そうし) ライター、一般社団法人fair代表理事 1994年、愛知県生まれ。政策や法制度を中心とした性的マイノリティに関する情報を発信する「一般社団法人fair」代表理事。ゲイであることをオープンにしながらライターとして活動。教育機関や企業、自治体等で多様な性のあり方に関する研修・講演なども行っている。単著『あいつゲイだって アウティングはなぜ問題なのか?』(柏書房)、共著『LGBTとハラスメント』(集英社新書)など。 文・松岡宗嗣 編集・神谷 晃(GQ)