中国進出の欧州企業、進む「サイロ化」-本社・他地域との連携減る
(ブルームバーグ): 中国で事業を展開する欧州企業の中で、より多くの現地生産を求める当局からの圧力によって、世界の他地域と連携せず事業を中国内で完結させる動きが見られている。効率性が犠牲になり、グローバルな優位性を失っている傾向があるという。欧州の大手企業の多くが加盟する在中国欧州連合(EU)商工会議所(中国欧盟商会)が、9日に発表した報告書で明らかにした。
同商工会議所が「サイロ化」と呼ぶこの現象の背景には、商業的な考慮よりも、中国の規制要件を満たし、信頼できる現地サプライヤーとして認められたいとの願望がある。報告書によると、中国での売上高が世界全体の30%以上を占める欧州企業のうち、86%が供給網を「大幅に」現地化しているという。
報告書では、こうした企業が供給網、労働力、販売、材料などの調達機能を現地化し、中国のみの研究開発やデータ、情報技術システムを持っていると指摘。「一部の会員企業は、こうしたプロセスに多大な投資を行い、もはや社名以外は中国企業とほとんど変わらないほどになっている」と述べた。
米国のトランプ次期大統領が今月後半に就任し、世界各国が「自給自足」の動きを進める中、国家間の経済競争の激化が予想され、企業は厳しい選択を迫られている。地政学的な緊張、世界2位の中国経済に対する悲観、現地企業との競争の激化により、昨年は対中外国投資が過去最低水準まで落ち込んだ。
EU商工会議所の調査によると、中国に進出している一部の欧州企業では、業務の重複によって増す非効率性とコストの上昇、世界的なコンプライアンス(法令順守)リスクの増大、競争力の低下といった問題が生じている。
調査に回答した企業は、過去2年間に中国でビジネスチャンスを失った主な理由として、中国の基準や国産品の購入を求める「バイ・チャイナ」政策への準拠の難しさ、現地生産の要請などを挙げた。報告書では、進出企業の現地化による影響のひとつとして、中国に拠点を置く子会社と本社間の信頼関係の低下が、新規プロジェクトや投資の活用の妨げとなっている点も指摘した。