「悪性のがん細胞」のゲノムの驚愕の姿…もはや正常だった頃とはほど遠い。活性酵素種が引き起こす「衝撃の変化」
DNAの何パーセントが損傷を受けたら細胞は死ぬか
いくら「変化すること」がDNAの特徴の一つだからといっても、そこには当然、限度というものがある。その限度を超えてしまえば、DNAはそのはたらきを失い、細胞は死ぬ、ということである。 福笑いで、顔のパーツの置き方を変えていって、ある時点までは「人間の顔だ」と感じられても、ある時点から「なんじゃこりゃ!」となってしまうのと、いうなれば同じということだ。 その限度はいったいどこにあるのか。どの時点でDNAの損傷が修復を上回るのか、DNAの何パーセントが損傷を受けたり変化したりしたら細胞が死ぬのかーーそのあたりをきちんと定量化して明らかにした研究は、まだないのではないかと思われる。 * * * ここ一連の記事では「変化する」ということ、すなわちDNAの突然変異と、それに基づく分子進化などについてお話ししてきたわけだが、DNAの変化はそれだけにはとどまらない。「もっとオモロイこと」が、この後に待ち受けているのである! じつは、読者の多くはDNAは「でん」と腰を落ち着かせているイメージを抱いてはいないだろうか。しかし、じつは、DNAは細胞の中で、あるいは細胞と細胞の間でも、盛んに動き回っている。 近年になってわかってきたことだが、生物のDNAも、じつのところいろいろと動き回っているのである。いったいどこをどう、動いているのか。『DNAとはなんだろう』でも紹介した、動くDNAの興味深い話題を、いくつかご紹介していこう。 * * * * * DNAとはなんだろう 「ほぼ正確」に遺伝情報をコピーする巧妙なからくり 果たしてほんとうに〈生物の設計図〉か? DNAの見方が変わる、極上の生命科学ミステリー! 世代をつなぐための最重要物質でありながら、細胞の内外でダイナミックなふるまいを見せるDNA。果たして、生命にとってDNAとはなんなのか?
武村 政春(東京理科大学教授・巨大ウイルス学・分子生物学)