【2025年の年初めに見たい映画】中年女性が新たな人生の一歩を踏み出す、一編の詩のような作品
発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための新作を厳選! いま見るべき新作映画3選
中年女性が新たな人生の一歩を踏み出す、一編の詩のような作品『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』
ジョージアの田舎町で、「美しさと快適さを ONLY FOR YOU」と看板を掲げ、女性のための日用品店を営む女性エテロ。意志の強そうな黒々とした太い眉、キリッと結ばれた唇、堂々たる体躯。近所の女たちは、48歳、独身の彼女の身の上や体型を面白おかしく噂しているが、当のエテロは「私は独身だから、誰からも自由なの。だからあなたたちと違って、肌も胸もお尻もハリがあるの」と堂々としている。町のカフェで「あんな体型では結婚できまい」と失礼な言葉を浴びせてくる爺さんには、「結婚やペニスが幸せを運ぶなら世の女たちはみな幸せなはず。でもどこに幸せな女がいる?」と鋭く投げ返し、好物のケーキ「ナポレオン」を美味しそうに頬張り続ける。
ジョージアの新鋭監督エレネ・ナヴェリアニ監督が自国のベストセラーを、アキ・カウリスマキを思わせる鮮やかな色合いの中に描き出した話題作。詩人の心を持ち、孤独と親密な関係を結びながら我が道をゆくエテロというヒロインがなんとも魅力的だ。そんなエテロは、秘密の丘でブルーベリーを摘み、美しいブラックバード(黒つぐみ)のささやきに吸い寄せられ、死の淵を覗いたことで心と体を目覚めさせる。そして死の淵から、予想もしていなかった新たな生の物語を手繰り寄せるスリルと詩に満ちた美しい逸品だ。 『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』 2025年1月3日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開 BY REIKO KUBO