「ドライバー不足と聞いてはいたけど…」クルマ社会の公共交通、知られざる“生き残り戦略”
〈岡山県“実は第3の町のターミナル”「津山」には何がある?〉 から続く 地方、有り体にいえば“田舎”とされるような、交通の便にあまり恵まれていない地域を観光か何かで訪れるとき、どのような交通手段を使うだろうか。 【画像】「想像以上だった」というドライバー不足、2年にもわたる「調整」…舞台となった「津山」を写真で一気に見る 自宅からクルマで行ける距離ならばそれで、そうでなくてもだいたいの場合は近くにある新幹線の駅か空港からはレンタカー、というのが一般的ではないかと思う。特にこだわりがない限り、公共交通、つまり本数の少ない鉄道やバスを使おうとはなかなか考えない。 それが、広域に点在する芸術祭の類いを周遊するとなれば、なおさらである。効率よく周遊するには、クルマを使うのがうってつけ。時間にも何にも縛られず、自由に回ることができるのだからクルマが便利なのは言うまでもない。 そんなところで、現在岡山県北部、津山市や新見市など12市町村で開催している「森の芸術祭 晴れの国・岡山」である。長谷川祐子氏が国内の芸術祭では初めてアートディレクターを務め、津山市、新見市、真庭市、鏡野町、奈義町に作品が点在する芸術祭だ。国内外の名だたるアーティストが参加し、インバウンドを含めて多くの人が岡山県の県北部エリアにやってくることを期待している、という。 岡山県の人口の大部分が集中している県南部、つまり岡山市や倉敷市はともかく、県北部ともなると、もとより圧倒的なクルマ社会だ。東から西へと貫くように中国自動車道が通り、遠方からのアクセスも容易い。そうした地域を舞台にする「森の芸術祭」だから、とうぜん来場者もほとんどがクルマ利用という前提で……と思ったら、必ずしもそうではないらしい。
「クルマ社会の広域イベント」でも来場者の3割は公共交通を使う
「クルマで来場される方もたくさんおられるかと思いますが、今回はクルマ利用が7割、残りの3割の方は公共交通を利用して来場することを想定して準備をしています」 こう言い切るのは「森の芸術祭」に企画協力で参画、交通アクセスなどの調整を担ったJR西日本岡山支社の川田由夏さんだ。 「もちろん何もしなければ、9割の方がクルマになったと思いますし、最初はそういう話もありました。 ただ、芸術祭というイベントの性質を考えると、クルマでは来られない方、来にくい方もたくさんいるはず。たとえば、海外からのお客さま、また首都圏などにお住まいの20~50代の女性。そうした方々は、免許を持たなかったり不慣れな場所で運転するのを避けたい人が多い。 そうした方にも芸術祭を楽しんでもらえるよう、公共交通だけで周遊できるようにしたんです」(川田さん)