4億円の赤字を全額負担…それでも経営者養成のプロが「音楽フェス」にこだわるわけ つてもノウハウもない「最後発」、ロッキン移転後の茨城で6万人を集めた戦略とは
今年の来場者の割合は、20代から50代までの各年代が2割台ずつ。また、開催後のアンケートでは、「ラッキーフェスが初めてのフェス経験だ」という回答が4割に上った。狙いに沿った客層を取り込めていることが数字でも表れている。 家族向けコンテンツにも力を入れた。海浜公園内の遊園地エリアやアスレチックを期間中も使えるようにし、授乳やおむつ交換ができる専用ブースを備えたキッズエリアも設置した。水戸市の花火業者が毎晩、音楽に合わせて打ち上げる約千発の花火も魅力だ。 ▽アーティストを撮ってSNS投稿、OKに 音楽フェスでは珍しい手法もいくつか取り入れた。例えば、多くのスポンサーを集めたことだ。つながりのある地元企業にも呼びかけ、今年は約50社に上った。「スポンサーが多い音楽フェスはあまり見かけない。プロスポーツの世界では、空きスペースになるべく広告を入れるという発想があるんです」。集めた収入は小学生以下のチケット料金を無料にするなど、サービスに活用した。
さらに、昨年からアーティストの写真・動画撮影と、SNSへの投稿を原則OKとした(NGを希望したアーティストの出演前にはプラカードなどで呼びかけ)。海外の音楽フェスでは制限が緩いが、国内では運営側が演奏中の撮影を一律に禁止することが多いという。取り組みはSNS上で話題になり、拡散された動画や写真は宣伝にもなった。 運営を指揮するイベント制作会社の矢澤英樹代表(53)は、「業界全体が既成概念に縛られている部分がある。堀さんの型破りな視点は、スタッフの意識改革にもつながっている」と話す。 来場者数も着実に増えている。1年目は2日間で約2万人だったが、3年目の今年は3日間で約6万人を動員した。その裏で、ロッキンに引けを取らない迫力のあるステージや、音響への設備投資にはコストがかかる。初年度は約7億円の費用がかかり、約4億円の赤字だった。 「昨年は赤字が半減した。今年も赤字の見通しだが、来場者数や満足度は伸びているので、いずれは黒字化する」。これまで200を超えるスタートアップ(新興企業)への投資で培った経験則だ。毎年の赤字は堀さんが全額負担しているという。 ▽ロッキンと手を携えて