『カムカム』は朝ドラとして何が画期的だったのか 3世代ヒロインだから描けたもの
朝ドラの本質とも言える「愛」の描き方
脚本とキャストが優れていて、作品としての強度が高かったことはここまでに記したとおり。それを前提としたうえで、ここまで視聴者に深く刺さる作品となった理由とは。それは朝ドラの本質とも言える、「愛」がしっかりと描かれていたからではないか。 すべての思いがつながっていく藤本有紀脚本の本作の中でも、もっとも象徴的なセリフがるいから安子へ向けた「I love you」だろう。かつて「I hate you」と母に告げたるい。互いに一生ぬぐえない傷を負った2人が、離れていた心と時間を最後の最後に埋めることができた。物語全編を貫くルイ・アームストロング「On the sunny side of the street」の楽曲とともに、『カムカム』はいまを生きること、誰かと愛を分かち合うことの喜びを全話を通して教えてくれた。 そんな朝ドラの“良さ”は現在放送中の『おむすび』でも本質的には同じ。これから、昼の『おむすび』再放送の前、12時30分から『カムカム』が放送されることになる。両者を比較して観るのも面白いだろうし、平成初期生まれの筆者としては、『おむすび』ヒロインの結(橋本環奈)がこの時代をどのように生きていくのか、2025年3月の放送終了までじっくり描いてほしいと思っている。
間瀬佑一