<掛布が語る>阪神がファーストステージで敗退した理由
敗退の阪神 広島との”違い”
失望感に包まれる阪神のCSファーストステージ敗退だった。2位チームの阪神が、本拠地の甲子園で広島に連敗を喫したのには、いくつか敗因がある。キーワードは“違い”である。 エースと4番の違い。 守備力の違い。 もうひとつ付け加えれば相手の嫌なことをやろうとする“したたかさ”の違いである。
”4番の違い” 練習からあった悪い予感
私は、CSの2日前に甲子園を訪れ練習を見させてもらった。阪神はバントなどのケースバッティングをしていた。バントプレーの確認は必要なものだったが、首をひねったのは、エンドランのケースバッティングを取り入れ、バッターがボール球を打っていたことである。CSのような短期決戦の前にボール球を打たせると間違いなくバッティングのメカニックは微妙に狂う。それほどバッティングとは繊細なものだ。特に阪神の打線はボールの見極めができないことが課題だったから、なおさらである。私は、「広島戦では打てなくなるぞ」と悪い予感がしたが、それははからずしも現実のものとなってしまった。 打線がつながらないどころかヒットも出ない。 初戦の前田健太、そして、バリントン。バリントンの序盤は調子がいいように見えなかったが、同じようなパターンの凡退を繰り返した。 好球に手を出すのはいいのだが、それをファウルにしてしまうからカウントが悪くなる。そうなると相手のウイニングショットの餌食である。 「狙い球を絞って、それが来るまで我慢する」という、ぶれない戦略がなかったのである。私はCS前から、その意思統一の必要性を指摘していたのだが、結局、カウントを追いかける最悪のパターンから抜け出せなかった。一方、広島には「狙い球を絞る」という我慢があった。この日、キラがボール気味のストレートを強引に引っ張って同点タイムリーとしたが、キラとマートンという両チームの4番の違いが、如実にゲームの勝敗を分けることになった。
西岡不在の練習 必死さの欠如
試合前に嫌な兆候はもうひとつあった。1番に座る西岡が、熱発で練習を休んでしまったことである。ゲームに出場できないほど深刻な病状であれば別だが、結果的に出場できたのだから練習に姿だけでも見せておかねばならなかった。西岡は、チームに勢いをもたらす中心人物なのだ。「何が何でも勝つ」という必死さをチームに伝えておくべきだったと思う。甲子園には、多くの広島ファンがつめかけ、レフトスタンドは真っ赤に染まった。私たちが、現役の頃の阪神―巨人戦を彷彿させるような独特の雰囲気が出来上がっていて選手は、いつもとは“違う雰囲気”の浮き足だっているようにも思えた。こういう時こそ、勢いをチームに引き込んでくるのは、必死さやガムシャラさなのだ。