原ゆたかさんが明かす『かいけつゾロリ』の秘密「どんな子も最後まで読みたくなる」
『かいけつゾロリ』シリーズは、今も昔も子どもたちに大人気の作品です。作者の原ゆたかさんは「読者が何をおもしろいと思ってくれるか、常に考えつづけている」と語ります。『かいけつゾロリ』のおもしろさの秘密とは? お話を聞きました。 (取材・文:髙松夕佳、写真:大靍円) ※本稿は、月刊誌『PHP』2024年4月号より、一部編集・抜粋したものです。
物語を読む子供たちをワクワクさせたい
キツネのゾロリとイノシシのイシシとノシシが冒険をくり広げる『かいけつゾロリ』シリーズは、1987年から年2冊ずつ刊行し、最新刊で74巻を数えました。描きつづけてこられたのは、小学生時代の楽しかった記憶が鮮明に残っているからです。 父親が転勤族だったため、熊本、東京、兵庫、愛知......と、何度も引っ越しと転校を経験しました。苦労したものの、方言を覚えたり、処世術を学びました。特に小学生のころは、漫画を描いてクラスで回し読みしてもらったり、学校の屋上で「東京オリンピックごっこ」をしたり、とにかく楽しかったですね。 一番熱中したのは、友達と2人で怪獣映画を撮ったこと。8ミリフィルムカメラを友達のお父さんに借り、こづかいをはたいて3分20秒のフィルムを買いました。友達の部屋の二段ベッドの一段目に砂や土を敷き詰めてジオラマを作り、撮影するのです。 火山の噴火とともに怪獣が現れるシーンを撮ったときには、紙粘土で作った火山に煙だけ出る花火を仕掛けました。でも、四畳半の部屋を閉めきっていたため煙が充満して、現像したフィルムには何も映っていなかったんです(笑)。 煙突が倒れるシーンでは、お線香を煙突に見立てて撮ってみたら、迫力ある映像になり、大成功でした。お金がないから、家にあるものを使って撮れる方法を、友達と話し合って試行錯誤するのが楽しかった。遊び方を工夫した経験は、追い詰められたゾロリがどう問題を解決するかを考えるのに役立っています。思いきり遊ばせてくれた親には感謝しかありません。