『光る君へ』ロスの私。6年前に光源氏を演じた舞台、その実現までの道のりを思い出す
100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第88回は「観世能楽堂公演」のお話です。 (写真提供◎越乃さん 以下すべて) 【写真】大鳥れいさん、立樹遥さんと私 * * * * * * * ◆私の大挑戦 『光る君へ』が終わりました。 すっかり『光る君へ』ロスです。 今から6年前、舞台で光源氏を演じたことがありました。 芸能生活25周年を迎えた年に、記念の何かをしたいと思い、私が選んだ舞台は能楽堂でした。 GINZA SIX観世能楽堂。 この舞台で演じてみたい! 今まで日本物にあまり興味のなかった私が、なぜお能の舞台の能楽堂でやりたいと思ったのか、その経緯は忘れてしまいましたが、ここでやる!という強い決意は覚えています。 宝塚時代、お稽古場も劇場も、演じる演目も役も、衣装も靴も小道具もすべて与えられていました。 演者は与えられた役を演じ、与えられたことを精一杯やるだけです。 今まで当たり前だったそのことがどれだけありがたく、すごいことだったかを退団してから知りました。 1から作る能楽堂の舞台。 とんでもない場所で、私の大挑戦が始まりました。 ぼんやりと源氏物語がやってみたいというのは思っていました。 しかし、誰と? 演出は? 衣装は? そもそも能楽堂は借りられるのか?? そんな山のように出てくるいろいろな問題を1つずつクリアしていく中で、どうしてもクリアできない問題がありました。 それは、演出家問題でした。 一番大事な演出を誰にお願いしようかと思ったとき、ふっと思い浮かべたのが宝塚歌劇団の演出家、齋藤吉正先生でした。 先生が仕掛けてくる独特の世界観が好きでした。 守備範囲の広い齋藤先生なら面白いものを作ってくれるかもしれない。 そう思うやいなや、速攻で劇団に電話をしていました。 ところがその時期、先生は月組公演を控えていて難しいとの事...。 しかし、自分の中で齋藤先生にお願いしたい!と盛り上がった気持ちを0には出来ず、どうしても諦めきれなかった私は、また再び自分で直談判を。 猛アタックをかけ、思いの丈を劇団に伝えお返事を待つことに。
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