本命「小泉進次郎」vs.対抗「小林鷹之」? 総裁選で世代交代アピールを狙う自民党
「世代交代」を目指し動き出す若手議員たち
次の総裁選挙は自民党と所属議員にとっては運命を左右するものになるだろう。 岸田の評判が決定的に悪いだけでなく、去年秋に表面化した安倍派などの裏金問題で自民党そのもののイメージが地に落ちた。最近も、過去5年間で2000万円以上の裏金を受け取っていた堀井学衆院議員の公職選挙違反事件や、公設秘書給与の詐取疑惑で強制捜査を受けた広瀬めぐみ参院議員の事件が次々に表面化して、“カネに汚い自民党”のイメージはさらに強まっている。 自民党若手議員「総裁選で刷新感を出さなければ党は本当に終わってしまう」 こうした声は党内で確実に広がってきている。 つまり岸田はもちろん「ノー」だが、この際、茂木敏充幹事長(68)や石破などのベテランではなく、「世代交代」の名の下に一気に総裁や幹部らの若返りを図るべきだという動きが、水面下で始まっている。 ある自民党関係者は、現状に危機感を持つ若手が幾つかのグループになって総裁候補の擁立に動き出したと話す。そうした候補の1人となっているのが進次郎だというのだ。 進次郎当人も少人数の若手議員らと接触をはかり始めた。周囲には「決断するときは自分1人で決める」と漏らすなど、明らかに総裁選に向けてハラは固めつつあると見て良い状況だ。 もし進次郎が立つとなれば、これまで後見人的な立場であった菅義偉前総理(75)は支持に回るだろうし、「菅グループ」と呼ばれる議員らも大方は支持するだろう。知名度もあり、バックアップ体制も強固となれば、進次郎の総裁就任も現実味を帯びることになる。
タカ派のホープとしての「コバホーク」
しかし、不確定要素も多い。永田町では現状、“進次郎待望論”が必ずしも大勢とは言えない状況なのだ。強力なライバルが出現しつつあるのが、その大きな理由だ。 自民党関係者「いま若手議員の間で総裁候補として名前が挙がっているのは2人です。一人は進次郎さん、もう一人は、前の経済安全保障担当大臣の小林鷹之議員です」 小林鷹之は2012年に自民党が政権を奪還した衆院選挙で初当選した。まだ49歳で本人も若手の部類に属するが、経済安全保障や外交、防衛などの分野における政策通として知られ、党内きってのホープと見なされている。 派閥は二階派に所属していたが、3年前の総裁選では故・安倍晋三元総理が推した高市早苗現経済安全保障担当大臣(63)の推薦人になるなど政治理念としては「右寄り」、もしくは「タカ派」的な性格が強い。このため若手議員の中でも特に旧安倍派の支持が集まっている。この他、経済安全保障政策に力を入れる甘利明前自民党幹事長(74)らも小林の支持に回る可能性がある。 名前をモジって自民党内では「コバホーク(鷹のHAWKから)」と呼ばれる小林について、別の自民党関係者は総裁選で台風の目となり得ると見ている。 自民党関係者「(小林は)若手で手垢がついていない分だけ、(出馬すれば)党が変わったというイメージは強くなる。後は知名度が短期間でどれぐらい広がるかだね」 自民党議員「コバホークと進次郎が揃って出たら、どっちを推すか悩むね」 進次郎サイドにとっては若手が一致して推してくれることが理想なのだろうが、すでに安倍派の若手を中心に小林への支持が広がりつつあり、そういった構図が描けない可能性がある。むしろ旧安倍派の若手がこぞって小林を推すことになれば、それに追随する議員も出てくるであろう。進次郎vs.コバホークのどちらが若手の支持を集めるか。場合によっては拮抗することも予想される。 小林自身、報道陣の取材に対して「いつかは国の舵取りを担えるような立場になりたいと。そういう人間になれればということで日々研鑽を積んでいる」と意欲を隠さないため、進次郎を支持するグループも警戒を強めている。 筆者は、進次郎と小林両人の動きが表面化するのは今月下旬以降と予測する。いまは両陣営とも、立候補に必要な推薦人の確保や目玉政策をどうするかといった“弾込め”に専念している時期であろう。 思わぬ同世代の強敵の出現――。かつて高校球児だった進次郎は、この「熱い夏」をどう乗り切るのか。 (敬称略)
政治ジャーナリスト 永田象山