【独自】 “沖縄本島にいないはずのシカ”徹底追跡 「5頭飼っていた」と取材に答えた施設「2頭だった、去年死んだ」と訂正…深まる謎 繁殖すれば固有種豊かな「やんばるの森」に危機
記者は、目撃されたシカに心あたりはないか、改めて「やんばるライオン」に確認した。 ▽やんばるライオン代表 松村一史さん 「我々のところでは飼育を今していない状況があって、シカが出たということで、“逃げたんじゃないの?”とご心配していただく声はある」 「ですけれども、うちから逃げたものではなくて、誰かが個人的に趣味で飼われていたものなのかー」 シカは園から逃げたものではないと、はっきり否定した。 やんばるの森でシカが目撃される現状に、動物の保護活動を続けてきた獣医師の長嶺隆さんは、人への被害や、シカを媒介とする感染症などを危惧している。 ▽どうぶつたちの病院・長嶺隆 獣医師 「琉球列島というのは、非常にやさしい森の生態系ができあがっているんです。やたら強いやつがいない。草食動物にどんどん食べられるという前提にはなっていない」 「ですからシカみたいなものが入り込んできたときに、おそらくものすごい勢いでやられてしまいますね」 指摘する最大の問題は「やんばるの森全体に与える影響」だ。長嶺さんが今回の事態を危惧する背景には、県内におけるマングース導入の負の歴史がある。 県内では1910年、ハブ退治を目的に、17頭のマングースが那覇市首里に放たれた。沖縄本島を北上し、ピーク時には1万頭までその数を増やしたマングースは、ヤンバルクイナをはじめ、やんばるの希少な生物に大きな被害を与えることになった。 ▽どうぶつたちの病院・長嶺隆 獣医師 「シカの写真を見た時に、またか、と思いました。(被害は)わずか数頭から始まるんです。今なお沖縄島ではマングースの問題ひとつ解決していない、これに学んでいないですよね」 ある日突然外来種が見つかっても、原因を突き止めることができない現在の状況。 飼育される動物の管理体制を根本的に見直す必要があると、長嶺さんは訴える。 「マイクロチップが入っていたり、見てわかるタグが付いていれば、どこが由来かってわかるんですね。ところがそういうシステムがない。原因者がちゃんと特定できる仕組みを作らないと、原因者が誰かわからないですよね。何もその証拠がないわけですから」