国民をバカにしている! 自民党が政治資金規正法改正で「外部監査強化」ではなく「第三者機関」にした許しがたい理由とは
なぜ外部監査強化を避けるのか
ここで不思議なのは、政治資金のチェックに「第三者機関」が登場してきたことだ。政党交付金などはすでに監査法人などによる「外部監査」が導入されている。政治家本人が代表を務める政治資金団体の報告書でも、公認会計士や税理士による「外部監査」が行われている。当初、議論に上っていたように、そうした外部監査を強化するのではなく、なぜ新しい「第三者機関」にチェックさせるという話になったのか。 比較的まともに監査している政党交付金監査では、独立した第三者である専門家集団の監査法人がチェックをしている。不記載など不正の舞台になっている「政党支部」は本来、政党の組織だから、「連結決算」をきちんと導入すれば済む話だ。 会計士や税理士が行っている「政治資金監査」について、収入のチェックもなく、支出額と領収書を突き合わせる程度で、監査と呼べる代物ではない。これをきちんとした世間並みの「外部監査」にしていくだけで、資金の透明性、収支の正当性は担保できる。それなのに、監査法人や公認会計士といった「外部の専門家組織」ではなく、新たに「第三者機関」を作ると言う。 当初、政治資金規正法改正の柱として「外部監査の強化」が俎上に上がった際、日本公認会計士の幹部らは対応に苦慮した。現行の政治資金監査が監査といえる代物でなく、それを強化するといっても簡単にはできないことを知っているからだ。協会の幹部が自民党の政策担当幹部を訪ね、「外部監査の強化」と言うのは止めて欲しいと非公式に申し入れた、という噂が流れている。要は、プロとして責任を負えないから、渦中から逃げた、と言うことなのか。本来、会計の専門家集団ならば、政治資金の透明化に向けて監査制度をどう構築していくか、申し入れたりアドバイスしたりすべきところだが、すっかり口をつぐんでいる。
「第三者機関」ほど当てにならないものはない
そこで登場したのが「第三者機関」だ。 企業が不祥事を起こすと最近は決まって第三者委員会などを立ち上げる。だが、その「第三者委員会」がくせ者なのだ。不祥事を起こした経営陣が委員を選んでいたり、第三者性に問題があるなど、独立性が疑われるケースが枚挙にいとまがない。つまり、第三者と言いながら都合の良いメンバーが選ばれているのだ。 そんな第三者委員会が出す報告書をチェックし、「格付け」をしているチームがある。弁護士の久保利英明氏や青山学院大学名誉教授の八田進二氏ら9人が手弁当で行っている「第三者委員会報告書格付け委員会」だ。この委員会が格付けした27件で、委員の総投票数224票のうち、Aという格付けを得た報告書は2件2票のみ。AからDまでの格付けで、CあるいはDと判定されるケースが圧倒的に多いのだ。さらに評価対象にすら該当しない不合格のFと判定されたのが15件で60票にのぼる。上場企業など世の中の関心が高い不祥事の第三者委員会ですらそんな体たらくなのだ。 政治資金の透明性をチェックする第三者はいったい誰が選ぶのか。チェックされる側の国会議員が選ぶのだとすれば、不祥事企業の経営者が選ぶ第三者よりも酷いチェック能力の乏しい機関になるのはミエミエである。 もちろん、きちんとチェックをされては困るから、外部監査の強化ではなく、第三者機関を作ることにしたのだろう。こんな法案を通して、透明化が進むなどと真顔で言う国会議員は、とことん国民を舐めているとしか言いようがない。
磯山 友幸(経済ジャーナリスト)