【社説】文前大統領の捜査にも「被疑事実リーク」の手口を使うのか
文在寅(ムン・ジェイン)前大統領に向けた検察の捜査が行われている中、「検察発」の捜査情報がマスコミに報道されている。過去、検察が捜査に有利な世論を作るために被疑事実をマスコミに流して発生した悲劇的な事件を思い出させる。ちょうど「(大統領夫人)キム・ゴンヒ女史ブランドバッグ受け取り」をめぐる検察の捜査が終了し、文前大統領に対する捜査の意図に疑念の声があがっている中、「被疑事実の公表」で物議を醸し、捜査に対する不信感を自ら招こうとしているのか。 「朝鮮日報」は2日付で、文前大統領の娘の元夫であるS氏の「タイ・イースター航空不正採用疑惑」に対する検察の捜査内容を報道し、口座追跡内訳と関連者の陳述などを詳細に取り上げた。全州(チョンジュ)地検が誰の口座をどのようなきっかけで追跡し、どのような供述を得たのか、出所が疑われる金額はいくらで、その理由は何なのかなどを、まるで検察の捜査記録を直接見たかのように詳しく報じた記事だった。検察は、記事の内容が事実かどうかについては明らかにしていない。しかし、検察ではなく周辺の取材だけでは到底確認できない内容であり、検察側から捜査情報が漏れたとしか考えられない。検察または権力機関が文前大統領に恥をかかせるため、わざと捜査情報をリークしているのではないかという疑念を抱かせる。 野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員は「朝鮮日報」の記事について、「(文大統領夫人の)キム・ジョンスク女史が娘にこのお金を振り込んだ時期は、2022年に(文大統領が)退任した後で、娘の元夫が就職した2018年とは全く関係がない」と反論した。この釈明が正しいかどうかを確認するのが、今回の検察捜査の目的だろう。これを確認する前に後ろに隠れて断片的な情報だけをマスコミに流し、まるで大きな不正があるかのような印象を与えるのは非常に不適切だ。そのようにして導き出された検察の捜査結果が、果たして国民の信頼を得られるだろうか。 被疑事実の公表は厳然たる犯罪行為だ。起訴権を独占した検察が起訴せず、実際に処罰が行われないだけだ。被疑事実の公表は捜査対象者に甚大な圧力を加える。さらに、このように一面の情報がリークされた場合、大抵の人はまともに釈明すらできない。たとえ後で無罪判決を勝ち取ったとしても、すでに大衆に刻まれた印象はそのまま残る。これまでもマスコミを通じた検察をはじめとする捜査機関の世論操作で、多くの悲劇的な出来事があった。「あぜ時計」(故盧武鉉元大統領が検察の取り調べで、夫人がもらった時計を田んぼに捨てたと供述したことに由来。検察の捜査情報リークが、盧元大統領が自ら命を絶った原因とされている)が代表的な事例だ。政権の利害に従って、(盧武鉉)元大統領に恥をかかせることで、社会全体に大きな傷を残した。検察は文前大統領関連捜査で客観的証拠を通じて確認された容疑だけを起訴し、速やかに裁判所の判断を受けるようにすべきだ。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )