【大学野球】中山太陽が文句なしのベストナイン 東大から史上2度目の3季連続受賞の快挙
愛着ある背番号44
立派な個人賞だが、心の底からは喜ぶことはできない。東大は今秋、2017年秋以来のシーズン2勝(慶大2回戦、法大2回戦)を挙げたものの、勝ち点(2勝先勝)は遠かった。1998年春から54季連続最下位。中山は「来年は酒井、大原と自分の3人で打線をけん引し、勝ち点奪取、最下位脱出を目指していきたい。個人成績は、この秋を上回る数字を残していきたいです」と力強く語った。 中山は2年時に背番号35を着けたが「『左の未完の大器』から飛躍されたイメージがある」と、ソフトバンク・柳田悠岐、DeNA・佐野恵太にあこがれ、上級生となった今春からは自ら希望して44を着けた。今秋は打撃好調のシーズンを過ごしたが「このままでいきます」と、愛着ある背番号を変えるつもりはない。 東大には1年間の浪人を経て入学。ぜんそくを抱えており、現在も薬を服用している。「体の不安があり、果たして、練習についていけるか……。一歩、踏み出すことができませんでした」。当初は野球部に入部するつもりはなかった。ターニングポイントは1年秋。宇都宮高の先輩である阿久津怜生外野手(当時4年)の活躍から、影響を受けた。阿久津はアメリカンフットボール部から2年生8月、野球部に転部。俊足と力強さがある打撃で、4年時はプロ志望届を提出した。指名はなかったが、果敢に挑戦する姿に感銘を受けた。 1年秋のリーグ戦後、中山は10月末に入部した。左のパワーヒッターは2年春から出場し、3年春からは外野のレギュラー。打率.269と存在感を示すも、法大1回戦でスイングした際に右肩を痛め、シーズン終盤3試合を欠場した。右肩は今も万全ではない。「1試合、1試合を出し切る思いでプレーしてきた」。すでに酒井は卒業後の「プロ志望」を表明しているが、中山は野球継続を含めて、慎重な姿勢を崩さない。まずはこのオフは治療に専念し、来春の開幕に照準を合わせて準備する。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール