予選準決勝で無念のPK戦負け。双子の兄と“2人揃って選手権のピッチで”の夢は叶わずも、市船GKギマラエス・ニコラスの高校サッカーは終わらない
「プレミアリーグに残すことが僕ら3年生の使命」
「2人揃って選手権のピッチでプレーすることはやっぱり夢なんです」 だが、現実は厳しかった。日体大柏戦、ガブリエルはベンチスタート。ピッチに投入されたのは延長前半開始のタイミングだった。プレー時間は20分間だったが、延長後半6分にキャプテンの岡部タリクカナイ颯斗が2枚目のイエローカードで退場すると、ガブリエルとニコラスは数的不利を凌いでPK戦を迎えた。 このPK戦で2人目のキッカーとして登場したのがガブリエルだったが、彼のキックが相手GKに止められた。試合後、今度はニコラスがガブリエルに寄り添った。 「ガブなら途中出場の難しいなかでも絶対にしっかりとやってくれると思ったし、信じていました。結果としてPKは止められてしまったのですが、あの緊張感のなかで蹴ってくれたことに感謝しています」 心の底から感謝を示す純粋な言葉だった。同時に自身への思いも口にした。 「だからこそ、僕がもっと止めたかった。でも、出た結果はもう変えられないので、素直に認めたいです。これからはチームをプレミアリーグに残すことが僕ら3年生の使命。この敗戦はみんなにとって今後に向けての力になると思うし、僕もそうならないといけない。去年の国立でも似たような感じのことは言ったのですが、こんな思いはもう二度としたくないので、さらに力をつけて、成長させてプロになりたいです」 取材を受ける前に波多秀吾監督から告げられた「悔しい思いをした後に何を口にできるか。これはこの先、プロになりたいんだったら絶対に必要だぞ」という言葉の意味を彼自身はすぐに受け止めたように、自分にベクトルを向けてこれからどうすべきか考える力を持っている。 まずは11位の降格順位にいるも、同じ勝点で並ぶその上の2チーム(尚志、FC東京U-18)を超えての残留を、大学は別々となる兄・ガブリエルと果たしたい。そして有終の美を飾って、それぞれの大学サッカーへと羽ばたいていくために。ニコラスの高校サッカーはまだ終わらない。 取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)