インバウンド客向けの“二重価格”はアリ? 導入の飲食店オーナー「外国人客は接客コストなどが発生」 夏野剛氏「日本の信頼感を崩していく気が」
■夏野剛氏「日本の信頼感を崩していく気がする」
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、「フェアネスが日本の美徳だ」との考えを述べる。「外国人からぼったくりと捉えられないように、『日本人だから割り引く』ではなく、時間や曜日などでの割引がいいのでは。日本の信頼感を崩していく気がする」。 海外では、文化芸術施設などで、地元住民と観光客に価格差が設けられている例がある。たとえば、ハワイ・ダイヤモンドヘッドでは、ハワイ在住者が無料、観光客が約800円。エジプト・ピラミッドは、アラブの人たちが約200円、外国人が約1800円、フランス・ルーブル美術館は、欧州の26歳未満などが無料、一般が約3700円に設定されている。夏野氏は「税金で作られているものを住民が使う場合には、ちょっと考え方が変わる」とする。
その上で、「外国人でにぎわう飲食店が増えれば、地元住民の参入チャンスになる」とも指摘。「観光地になれば経済効果がある。住んでいる人には申し訳ないが、地元は潤う。この国は人口が減少し、経済も成り立たない。50年、100年先を見たときに『海外の人は来なくていい』と考えるのは危ない」と警鐘を鳴らした。 佐滝氏は「公の施設でないから、二重価格が認められる」側面もあると語る。「渋谷がそういう店ばかりになれば、『2030年に6000万人の外国人観光客を』という日本政府のメッセージに逆行する可能性がある。(JRの鉄道などが乗り放題になる)ジャパン・レール・パスや、高速道路割引のような外国人優遇施策もある。発信するメッセージがよくわからなくなっていて、『観光立国』を目指す立場として、整理する時期に来ている」。
■オーバーツーリズムの真の課題は“見えない部分”?
真の課題は「見えない部分」にある、というのが佐滝氏の持論だ。オーバーツーリズムの「見えない」課題として、ホテル・旅館が建ち過ぎた結果、土地や住宅が高騰し、住みたい人(特に生産人口)が住めない状況になる。また、市民相手の生活店がつぶれ、外国人向けの土産店になると、ますます市民にとって住みにくい街に変わる。長期的・トータルな目線で、国などが対策する必要性があると指摘する。 大阪府では、オーバーツーリズムの予防・対策や、街の美化を目的に「宿泊税」の引き上げを検討している。現状の宿泊税は、7000円~1万5000円は100円、1万5000円~2万円は200円、2万円以上は300円だ。宿泊税と同程度の「徴収金」も検討されている。大阪府の吉村洋文知事は、地元住民と外国人観光客の共存共栄が重要と位置づけ、財源として一部負担してもらう方針を示している。
こうした動きについて、夏野氏は「ヨーロッパでは、以前から言われている」と語る。「ベネチアは、何十年もオーバーツーリズム。観光客に対して“入島税”を課すのは、二重価格ではなくゲートウェイを作るだけの話だ。ただ大阪の例は、自治体による徴収になるため大変。国として『入国時の航空券代に載せる』などの方法を考えた方がいいのでは」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)