自転車店店長からの転身 ZONESは2つのコンプレックスをプロレスに転化させた女
【WEEKEND女子プロレス#28】
数ある女子プロレス団体のなかでも特にユニークな存在が、2023年3月に旗揚げしたEvolution(エボリューション=エボ女)だ。全日本プロレスの諏訪魔、フリーの石川修司の指導を受けた女子プロレスラーたちによるリングは、ほかとは異なる独特のカラーを放っている。少人数ながら、ツートップと言えるChiChi(チーチー)、ZONES(ゾネス)の存在感がとにかくバツグンだ。男子レスラーのエッセンスも叩き込まれた2人は他団体でも引っ張りだこ。まもなく旗揚げ1年半を迎えようというところで、両者ともすでに100試合を突破した。エボ女興行が22回(9月1日現在)ということを考えると、驚異的な数字と言えるかもしれない。男子トップレスラーから基礎を叩き込まれた信頼性に加え、両極をなす2人のキャラクター性がこの数字を叩きだしているのではなかろうか。 【写真ギャラリー】鍛えあげた肉体で女子プロ界に存在感を示すZONES(写真:新井宏) ChiChiがバービー人形を彷彿とさせれば、ZONESは文字通りアマゾネスからのインスパイア。一度見たら忘れられないインパクトは両者共通ながら、キャラクターは正反対。これがまた、団体の魅力にもつながっているのである。 今回紹介するZONESは、栃木県日光市出身。大学卒業後、自転車を扱う企業に就職し、自転車店の店長を務めていたという。 「自転車の整備や販売、人を育てるなど得意ではありました。全部得意な仕事ではあったんです。でも、好きかと言えば、全然好きではなかった。我慢しながらやっていたところがあったんですよね。このまま終わるのは嫌だなと思っていた頃にコロナ禍となってしまい、疲れ果ててしまいました。というのも、ステイホームが当たり前になると自転車通勤が急増したり、子どもを近所で遊ばせるためだったりで自転車がものすごく売れて、かえって忙しくなってしまったんです。それこそお店の自転車がすべて売れてしまうくらいで心身とも限界となり、やめてしてしまいました」 退職後、とりあえず好きなことをやっておこうと、かねてから趣味にしていた筋トレに励んだ。 「安室奈美恵さんとか、細くてきれいな人が世の中を席巻していたじゃないですか。スタイルがよくてダンスもカッコイイ。あそこまではなれないとしても、近づきたいと思って筋トレを始めたんです。ダイエットやエステもしました。ただ、私はもともと筋肉質で、それがコンプレックスでもあったんですよね。そのうち、スリムな人にあこがれるよりも、元の素材を活かして筋肉をつけた方がカッコいいかもって気づいたんです」 コンプレックスを逆手にとると結果が出始め、トレーニングが楽しくなった。好きな筋トレが、のちの仕事にも生かされていった。 「ストレッチの資格を取って、トレーナーの仕事をしたり、ストレッチ店とか整骨院などでボディーケアの方もやっていましたね」