ユニクロの「3990円デニム」に敗北しただけではない…「何でも売れたアパレル店」ライトオンが"超失速"のワケ
■「全世代向け・家族向け」が致命傷に 2000年代後半以降の売り場を見ていると、ライトオンもマックハウスもかつての状態を維持しようとしてメンズ、レディース、子供服を揃えて「全世代の家族向けカジュアル売り場」に固執したと感じられます。しかし、このころになると老若男女を全世代で広く取り込んでいたのはユニクロや無印良品になっており、消費者の嗜好性とライトオン、マックハウスの方向性が全く噛み合わなくなっていました。 2015年以降は、ジーユーがビッグサイズトレンドの復活に乗って同系列の商品を低価格で多く発表したことにより、若者だけでなく、細身服を苦手とする中高年の年配客が多く流入するようになり、ユニクロだけでなくジーユーも全世代向けカジュアルブランドに変貌を遂げました。 そうなると、いくら声高に「全世代向け・家族向け」であると縮小を続けるライトオン、マックハウスが叫ぼうとも消費者の耳には届きません。業績の悪化によって経費削減で広告宣伝費が削減され、それゆえ集客ができにくくなり、また業績低下のために広告宣伝費を削減するという悪循環に陥ります。その結果、消費者の認知度を年々低下させ続け、多くの消費者から存在自体を忘れ去られたというのが現在の状況でしょう。 ■スタイルを変えて生き残った「アダストリア」 ナショナルブランドのジーンズを基本アイテムにしてそれに合うアメカジ、ミリタリー、ワーク、一部スポーツのトップス類を揃えるというスタイルのジーンズカジュアル専門店は現在では支持されなくなっているといえます。生き残っていたり発展したりしているのは、大きくスタイルを変えたジーンズカジュアル専門店ばかりです。 有名なところでは水戸のジーンズカジュアル専門店「ポイント」でしょう。完全SPA型に切り替え、今ではアダストリアHDと名前を変え国内屈指の大手企業に成長しています。 また三信衣料の関連企業だったジグ三信はアーバンリサーチと名前を変え、都心型セレクトショップとして発展しました。また地方店ではビッグアメリカンやボーンフリー、ビンゴヤなどはロードサイド型高感度カジュアルセレクトショップとして生き残っています。従来型のジーンズカジュアル専門店のスタイルを貫いたライトオン、マックハウス、ジーンズメイトの大手三社が凋落したのは皮肉な結果です。 ライトオンはワールドの傘下となり、マックハウスは親会社がチヨダからジーエフHDに移ることになります。近年積極的にアパレルの買収を続けているジーエフHDの傘下には「ロートレアモン」「ビッキー」などを展開するジャヴァHDがあり、マックハウスもそこと同列に並ぶことになります。 大手総合アパレルであるワールドの傘下となったライトオン、ジャヴァHDと並列するマックハウスという新しい体制は、まさにジーンズの特殊性がなくなり、一般的なアパレルに呑み込まれた事象を象徴しているように感じられます。 ---------- 南 充浩(みなみ・みつひろ) ライター 繊維業界新聞記者として、ジーンズ業界を担当。紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを取材してきた。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。 ----------
ライター 南 充浩