【なぜ国民民主は躍進し、斎藤知事は再選されたのか?】真の「ネット選挙元年」になった2024年
地域コミュニティーと異なる「ネット地盤」
このようにネットが引き起こすうねりは、都知事選、衆院選と時を経るにつれて加速していった。そして、兵庫県知事選ではついに、一度は失墜した斎藤氏の大逆転劇につながった。 これまで、政治家が選挙に勝つためには「地盤」「看板」「カバン」の「3バン」が必要だと言われてきた。地盤とは地元における後援会などの組織的な支持基盤であり、看板は知名度や肩書き、家系、政党ラベルなどを指す。そして、カバンとは資金力のことだ。 2024年以降、この「地盤」に「ネット地盤」が加わったと言えるだろう。従来、政治家は「どぶ板選挙」の呼び名が示すように、地域コミュニティーに深く入り込む活動を通じて、リアルな地盤を築くことに注力してきた。だが、今は特に都市部において、SNS上での発信力や支持者・インフルエンサーの支援など「ネット地盤」を固めなければ、そもそも主張を届けきれなくなっている。 「ネット地盤」を構成する有権者とは、どんな人々なのか。都知事選や衆院選を分析すると、興味深い姿が浮かび上がってきた。それは地域コミュニティーの中での人付き合いよりも、SNSなどネットを通じて地域の壁を越えたコミュニケーションや情報収集をする時間が長い人々ではないか。とりわけ東京では、石丸氏や国民民主党の支持層として、単身世帯や夫婦のみの世帯に属する有権者の割合の高さが目立っている。 それを裏付けるかのように、都知事選における石丸氏と蓮舫氏の得票率には地域差があった。石丸氏の得票率が相対的に高かったのは23区の中でも千代田区、中央区、港区、渋谷区、品川区など都心区が多かったのに対して、蓮舫氏が石丸氏と互角に競い合った地域は東京西部の多摩地区が中心だった。都心区は町会の加入率も低く、隣近所の名前と顔が一致しない、地域コミュニティーに属さない人が多く住む地域でもある。 石丸氏同様、ネット地盤を活かして躍進した国民民主党もやはり都市部を中心に得票していた。そして、兵庫県知事選において斎藤氏の得票率が唯一50%を超えたのは神戸市の都心である中央区だった。