現代自動車、K-POPファンの声無視できず 推し活は地球を救う
KPOP4PLANETの活躍は、韓国エンターテインメント業界にも大きな影響を与えている。サイン会などの特典付きCDの大量販売・廃棄を問題視する同団体の抗議により、ダウンロードや配信などのデジタルアルバムの発売が増加。最大手音楽配信サイトのメロンは再エネを使うデータセンターへの移行を開始した。大手芸能事務所も変化している。JYPエンターテインメントは全使用電力を再エネで賄う「RE100」を達成、YGエンターテインメントはソウルで開催した女性アイドルグループBLACKPINKのコンサートによるCO2排出量を公開した。 グローバル市場での利益確保とイメージを重視している韓国企業にとって、世界中で増え続け、SNS上で結束し、活発に発言するK-POPファンの声は無視できない存在だ。その中には株主もいれば顧客もいるからだ。 ●消費を動かすMZ世代 韓国内ではMZ世代が人口に占める割合が約3割と多く注目されている。MZ世代による悪い評判は瞬く間にSNSに広がり、それが報道され不買運動が始まる。その結果、経営が危うくなり投資も集まらないケースが何度もあった。そのため、MZ世代をターゲットに自社の環境対策をアピールする韓国の大手企業が相次いでいる。その1社が半導体・電機大手のサムスン電子だ。 半導体業界では製造過程で大量の用水を使う点が課題視されやすい。サムスン電子では半導体工場近くの川に天然記念物のカワウソが戻ったことを記念し、20年にカワウソのキャラクターを作成した。23年には、キャラクターが半導体工場の裏側を冒険するアニメを動画共有サイトに公開。動画はそれぞれ30万回以上再生されている。 長年、半導体市場シェア上位の座を守るサムスン電子の半導体事業では、半導体製造のために1日に約31万tの用水を使用する。用水管理に加え07年からは工場地域の川の水質改善も行う。こうした活動を、技術的な文書ではなく動画で紹介することで、若年層の理解を得ることを目指す。 「推し」で連帯する若い世代が、企業のサステナビリティの真贋にも注目し始めた。見せかけでなく実態ある経営が企業に求められている。 (「日経ESG」2024年7月号の記事を基に構成)
Cho Changeun