「マンガ図書館Z」サイト停止の背景を創設者の赤松健さんが説明 SNSでは決済代行会社による「焚書」と強い反発
SNSでは強い反発
赤松さんは、2010年にマンガ図書館Zの前身である「Jコミ」を立ち上げた。作者の許諾を得て絶版漫画を公開し、広告収益を作者に還元するというもの。その背景には当時「Winny」や「BitTorrent」といったファイル共有アプリによる違法な漫画流通が横行していたことがあった。 新刊であれば出版社の対応も期待できるが、絶版漫画はそうではない。そこで日本のあらゆる絶版漫画を集め、「日本の誇るマンガ文化を守り、正しく未来に残す」と共に、海賊版対策やクリエイター支援を兼ねた施策としてJコミはスタートした。急病に倒れた漫画家を支援する企画を行ったこともある。 15年には当時ヤフーの子会社だったGYAOと手を組み、「マンガ図書館Z」にリニューアル。同年6月に新会社・Jコミックテラスを設立した。同社は、23年に漫画のデジタル配信を仲介するナンバーナイン(東京都品川区)傘下に入ったが、基本的なスタンスはJコミ時代から変わっていない。 一方で、近年クレジットカードブランドのVisa/Mastercardなどは、決済という寡占的な立場を利用した表現規制圧力を強めている。24年3月には、ダウンロード販売サイト「DLsite」が提携先のカードブランドから特定語句の表現について規制要請を受けたと明かした。マンガ図書館Zも、集めた漫画に成人向けが含まれているため「アダルトコンテンツの取り扱い」を理由として契約解除の通達を受けた。 24年8月、一覧のクレカ規制について参議院議員の山田太郎さんはVisa本社を訪れて会談し、「Visa本社は、特定の用語(キーワード)を含むコンテンツを取扱ってはならない、と言った指示を出した事はない」「Visa規約についても、本社は基準を決めているのみで、判断を行っていない(判断を行うのは現場)」といった言質を取った。しかしマンガ図書館Zの状況からは、決済業者側の姿勢がより短絡的かつ高圧的になっているようにもみえる。 山田議員は、マンガ図書館Zの停止について「現時点では、決済代行会社の判断なのか、アクワイアラからの指示によるものなのか分かりません。今後、表現の自由、コンテンツ取引の自由を守って行く為には、特定の国際ブランド(本社・支社)との交渉だけではなく、国内だけでも数多く存在するアクワイアラや決済代行会社と交渉していく必要があります」と指摘している。アクワイアラとは、日本語で加盟店契約会社のこと。Visa/Mastercard/JCBなどのカードブランドからライセンスを得て加盟店の開拓や管理を行っている企業を指す。 マンガ図書館Z停止の一報を受け、SNSでは表現規制圧力に対する批判が巻き起こっている。「日本の法律になんら問題ないはずの経済活動を一方的に、それも焚書に等しいことをカード会社ができてしまうことは許しがたい」「『西洋の価値観、とされているものに背く』と看做されたら一方的に『市場』から叩き出されるのが正義、という社会が真っ当な筈がありません」「決済代行会社の意向次第で文化保存の試みが壊される・・・。JCBもダメとは・・・」。一方、今回クレジットカードと合わせて「ドコモ払い」も使えなくなることに着目し、クレカブランドの論理ではなく、何か別の理由があるのではないかと推測する人もいた。 これまでと少し様子が違うのは、クレカブランドのみならず、国内の決済代行会社や加盟店契約会社に着目し、疑問を呈する声が増えたこと。マンガ図書館Z停止のニュースが流れた5日午後には、Xで「決済代行会社」がトレンド入りした。
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