試合終了後、メンバー全員と交わした抱擁。BTテーブスHCがレッドウェーブに植え付けたファミリーの愛情
優勝の要因になったディフェンスと逆質問
そのやりとりは逆質問から始まった。 レッドウェーブをHCとして率いて、9シーズン。そのうちファイナル進出は4回。届かなかった優勝に今シーズン届いた理由は何か、BTテーブスHCに聞いた。「今年は特にディフェンスが理想に近づいたと思うが、去年と今年の違いはどこか?」。彼は逆に聞き返してきた。「じゃあモリモトさん、ずっとチームのディフェンスを見てもらって、どこが良くなったかちょっと知りたいね」。 予想外の逆質問に、意見を述べた。「一番はインサイドのディフェンスが変わったと思う。レッドウェーブは守備から速攻のチームと、数年前からコンセプトは変わらない。でも個人的には、その守備は長年完成していなかったように思う。今年はインサイドの守備が良くなり、それに伴いフォワード・ガードの出足が良くなったと感じていますが、どうでしょう」 BTは少しうなずき、続けた。 「確かに今シーズンのディフェンスの細かいスタッツを見ると、ペイントエリアのディフェンスが良くなった。インサイドを1対1で守れるようになったのはキーポイント。それと全体的に昨シーズンと違うのは、インサイドのミスマッチがある時の守備。センターの(ジョシュア ンフォンノボン)テミトペがベンチにいる間、チーム全員が中を意識して守れるようになった。あと、ボールプレッシャーが昨シーズンよりしっかりしていたね」 「レッドウェーブはアグレッシブなディフェンスを持ち味としていますが、ボールマンがペイントエリアに入らないよう、“チーム全員で守る”がよく意識できた年だと思う」
優勝への過程と異例の“全員優勝インタビュー”
今シーズンのレッドウェーブの中でも、いくつかポイントになった試合がある。チーム随一のディフェンス力を持つ内尾聡菜が、「ディフェンスのやり方をつかめた試合」として挙げる1月のトヨタ自動車アンテロープス戦は、ボールプレッシャーが激しくお互い引かない、ディフェンス面で見応えあるゲームだった。 プレーオフも、シャンソンVマジックとのセミファイナルに成長の過程が見える。第2戦目で19-0のリードをひっくり返されて敗れた試合について、「2戦目はチームの目標とするディフェンスを実現するための意識にヒビが入っていた。でも、3戦目はうまくアジャストしてくれたね」と話すBTテーブス。3戦目はディフェンスを立て直し、守備から攻撃のリズムをつかみ、3点シュートの確率90%(10本中9本)を達成して勝ったように、守備の確立とともにチームの安定感も増した。それは、ファイナルでの対デンソー3連戦でも力となっている。 「チームとして最後の1カ月、1クォーターの出だしがどんどん良くなっていった。オフェンスがうまくいったら、みんな“ノッてくる”から、そこはよかったところ。アグレッシブにアタックする意識を最後まで持てていたのがよかった。接戦になってもクロージングできると思って、信じることができた」 念願の優勝を飾った瞬間、コート上の優勝インタビューでBTテーブスHCは、「マイファミリーがいないとダメです」と話し、選手全員を呼び寄せた。異例とも言える、全員での優勝会見。それは、デンソーとのファイナル第2戦でテミトペが一時負傷でコートに倒れた時、自ら肩を貸しに行ったBTテーブスらしい振る舞いとも言えるだろう。 「(優勝インタビューでは)自然にああいう気持ちが出てきた。プレータイムは少ないかもしれないけど、ベンチメンバーが毎日の練習で頑張ってくれた。本当に、全員のおかげで優勝できたと思っているからさ」 それは、11年前にレッドウェーブに来てから、チーム全体を戦う集団に変えてきた、BTテーブスHCらしい優勝シーンだったように思う。