濃口醤油と淡口醤油、塩分が高いのはどっち?…醤油の「色の濃さ」と「味の濃さ」の知られざる関係
醤油にはいろいろな種類があるが、もっとも塩分が高いのはどれだろうか。日本醸造協会理事の村井裕一郎さんの著書『ビジネスエリートが知っている 教養としての発酵』(あさ出版)より、醤油の味の違いについて紹介する――。 【この記事の画像を見る】 ■ある時期まで醤油の歴史は味噌とほぼ同じ 奈良時代に書かれた『大宝律令』に「醤・豉・未醤」が登場するところまでは、醤油の歴史は味噌とほぼ同じです。 実際のところ、これらが液体状だったものなのか、固体だったのか、ご飯に汁としてかけて食べたのか、塗って食べたのか、あるいは他の食べ方をしたのかは、正確にはわかりません。 ただ確かに言えることは、奈良時代には穀物と塩を混ぜて発酵させ、調味料的に使用した「醤」や「豉」「未醤」と呼ばれる調味料があったということです。 ■「醤油」の登場は室町時代後期 穀物(時には魚や肉や野菜なども)と塩と水を適度に混ぜてドロドロとしたものをつくっておき、その液体部分を調味液として使うこともあれば、固体部分をおかずやご飯のお供として食べる、あるいは固体部分を溶かして汁物にしたり、ドロドロしたものをそのまま食品として食べたり、様々な食べ方がされていく中で、段々と、今の味噌や醤油のような形態や使用法に近づいてきました。 「醤油」という言葉が文献に表れるのは室町時代後期、16世紀に入ってからです。 この頃には、醤油と味噌がそれぞれ別の製品として認識されるようになりました。 江戸時代の初期には、火入れと呼ばれる加熱殺菌方法が開発され、麹のつくり方の改良や、木桶などの装置の大規模化も進み、大都市向けの商品としての生産と流通が始まりました。
■ルイ14世も日本の醤油をたしなんだ 江戸や大坂など大消費地を背景に、千葉の野田や銚子、紀州の湯浅、播磨の龍野(現・たつの市)などにも大きな醤油製造の拠点が生まれました。 これらは、現在でも、日本を代表する醤油の生産地となっています。 特筆すべきは、江戸時代には日本だけでなく、すでに世界にも輸出されるようになっていたということです。 フランスのルイ14世も、日本の醤油をたしなんだという記録が残っています。 ■醤油は大きくわけて5種類 醤油の種類は、大きく5つに分かれます。 濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、白醤油、再仕込醤油です。 ・濃口醤油 日本の8割を占めるのが濃口醤油、いわゆる一般的な醤油です。皆さんが頭に思い浮かべる醤油は大体この濃口醤油と思っていただいて間違いないでしょう。 ・淡口醤油 続いて淡口醤油。「あわくち」ではなく「うすくち」と読みます。 醤油の色が薄く、素材の色を邪魔しないので、白身の魚の白さや、卵焼きなどの鮮やかな黄色の色味を活かしたい、野菜のそのままの色を活かしたいとき、煮物をつくるときなどに好まれます。特に関西方面で愛用されています。 製法上の特徴としては、淡い色味に仕上げるため、濃口醤油ほど濃い色まで発酵させず、調味料としての機能を果たすために塩分の濃度を高くし、さらに製造中に甘酒を加えることが挙げられます。 なお、「薄口醤油」という表記を見かけます。薄口という表現ですと、塩分が低かったり、味そのものが薄いという誤解を消費者に与えるため、醤油業界では色が淡いことを示す淡いという字を使って「淡口醤油」(ラベルの名称としては平仮名で“うすくちしょうゆ“)と表記しています。