円やユーロなど対ドルで上昇-ベッセント氏の財務長官起用で安心感
ベッセント氏起用の発表を受け、ブルームバーグが市場参加者を対象に実施した調査では、同氏が関税について一段と段階的なアプローチを取り、財政赤字の抑制に取り組んで債券相場にプラスになるとの見方が示された。これは米経済と市場にとって明るい兆しであると同時に、トランプ氏の復帰が他国の経済や通貨に与える影響を巡る懸念も、一部和らげる可能性がある。
ベッセント氏の財務長官就任には上院での承認が必要だが、ウェストパックの通貨戦略責任者、リチャード・フラヌロビッチ氏は「ベッセント氏指名の発表はトランプ氏の急進的な政策のテールリスクが誇張され過ぎているという新たなシナリオを増強するものだ」と分析する。
その上で、マット・ゲーツ氏が司法長官候補の指名を辞退し、共和党上院院内総務にトランプ氏が推す人物ではなく、スーン議員が選ばれたことは「トランプ氏の急進的な政策提案を抑制と均衡が緩和する可能性があるとのメッセージを補強することになる」と語った。
それでも、過去8週間のドルの上昇幅が完全に帳消しになることはないだろう。トレーダーは、堅調な米経済でインフレが加速することを懸念し、2025年の米金融当局による緩和への期待を後退させている。
米紙ウォールストリート・ジャーナルがインタビューを引用して報じたところでは、世界の基軸通貨としてのドルの地位を維持することもベッセント氏にとって重点事項になるという。
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、投機トレーダーは11月19日までの1週間で、ドル上昇への賭けを6月終盤以来の強気水準まで引き上げた。
ANZバンキング・グループのアナリスト、フェリックス・ライアン氏は「米国の利回りが低下した場合、現在の反応はドルの短期的な調整につながる可能性がある」と説明。「しかし最終的には、22日に発表された11月の購買担当者指数(PMI)速報値で鮮明となったような米国の堅調な成長と、それとは対照的な欧州連合(EU)および世界の低成長という、基本的なダイナミクスが依然としてドルを支える論拠になるとみている」と話した。