「火葬代が値上げされても、結局東京都民は黙って利用するしかない…」多死社会ニッポンを見舞う想定外の大問題
前編記事「他県では1万円、東京では9万円…ヤバすぎる「火葬代格差問題」その根本原因がわかった」では、値上がりを続ける東京23区の火葬代について紹介してきた。続くこの後編記事では、値上がりの背景について引き続き紹介していく。 死刑に立ち会った刑務官が明かす…執行直前に死刑囚が語った最期の言葉
利益優先の「中国的経営」
上場企業が利益を追求するのは当然とはいえ、「生き死にに関わる事業には公共性の観点も必要」と指摘するのは、新宿区長の吉住健一氏だ。 「物価高、資源高が進むいま、一定の値上げが必要だとは理解しています。しかし、他の商品やサービスの値上げ率と比べても明らかに値上げ幅が大きいと思います。 実は以前にも、東京博善が火葬代の大幅値上げに踏み切ろうとしたことがあったのですが、東京の区長らが連合で見直しを申し入れたところ、値上げを断念してもらった経緯がありました。ただ、いまの経営陣になってから、真摯に話を聞いてくれなくなった印象があります」 ドライで合理的な「中国的経営」の論理を優先しすぎた結果、業界内では強烈な反発も喰っている。東京都内の葬儀業者が明かす。 「羅会長らが関わる前は、東京博善とは『火葬事業と葬儀事業は別。葬儀事業には足を踏み入れない』という暗黙の了解を維持してきた。ところが近年では、葬儀事業にも力を注ぎ始めたのです」 この葬儀業者によると、従来は「大まかに分けて火葬は東京博善、それ以外の通夜・葬儀などに関する葬祭は各々の葬儀会社が担当する」という棲み分けが行われていたという。 「'19年の時点では、東京博善はわれわれ葬儀業者との会合のなかで『葬儀事業には参入しない。その計画はない』と話していたのです。ところが、羅会長らが関わるようになったくらいの頃から、広済堂HDは関連会社を通じて、葬儀サービスを始めた。以前の慣習など関係ないということでしょう」 これも広済堂HDからすれば、利益が上がる事業と判断し参入した、というところだろう。しかし、この業者は「公正な競争と言えるのか」と訴える。 「この国では火葬が絶対に必要ですから、火葬代を値上げされても、利用するしかない。あくまで仮定の話ですが、将来的に火葬代の値上げなどで財務体質がより強固になれば、さらに幅広く事業を展開できるようになる。彼らにはそういう強みがあるのです」(同前)