寺を乗っ取られた元住職が語る 1000年を超える歴史の寺が「ごみ捨て場」 自分も被告人となり…「自身の甘さが発端です」
■「寺の運営を立て直すため」 特養ホーム建設でつまづき
事件の発端は自らの失敗からでした。辻見被告は寺とともに、父親から受け継いだ寺の境内に特別養護老人ホームを造ることを計画しました。檀家が減り、収入が減った寺の運営を立て直すための秘策でした。 しかし、建設の手続きの中で大阪市に虚偽の書類を提出していたことが発覚し、手にするはずの補助金がストップ。資金繰りが悪化して建設会社への支払いが滞り、窮地に陥ったのです。 【正圓寺・元住職 辻見覚彦被告】「建設を請け負ったゼネコンの方から工事代金の未払いということで、特養の敷地・建物に仮差押さえがついたんです。初めての経験だったんで、まったく右も左も分からなくて」
そんな辻見被告に友人から紹介されたのが、ともに逮捕・起訴された南野潤二(みなみの・じゅんじ)被告(55歳)と西村浩(にしむら・ひろし)被告(57歳)でした。 【正圓寺・元住職 辻見覚彦被告】「やわらかい物腰で接してきましたけどね。(土地取引に関して)はるかに高度なスキル(知識)は持っていたと思います」
南野被告と西村被告は不動産取引の知識と経験を誇示し言葉巧みに信用させると、「このままでは大変なことになる」と繰り返し、辻見被告を追い込んでいったというのです。 【正圓寺・元住職 辻見覚彦被告】「『寺を全部取られて、住職が逮捕される』とずっと刷り込まれていたので」
この窮地を脱するには2人にすがるしかないと思うようになった辻見被告。差し押さえを免れようと、言われるがままに寺の土地の一部を西村被告の会社に売ったように見せかける虚偽の登記をし、今、罪に問われています。
【正圓寺・元住職 辻見覚彦被告】「一時的に資産を隠さんと全部取られるよ、移転登記した方がいいとたきつけられて。それをうのみにして信じて言われたとおりに、はんこをついてしまったのかなと。(Q.どの書類に押印したのか覚えていないのですか?) そうですね」
■気づけば土地が勝手に売却 「よくも、ここまでだましてくれたな」
しかし、気づいたときには土地は勝手に売却され、売却代金およそ1億1000万円は西村被告が受け取って正圓寺には1円も入りませんでした。 【正圓寺・元住職 辻見覚彦被告】「もともと売るつもりはなかったので、それを勝手に売ってしまったことに関して自分の中でいまだに『何で?』という思いがある。よくも、ここまでだましてくれたなと思います」 差し押さえを免れようとしたはずなのに結果的に土地を失っただけ…そして、これだけでは終わりませんでした。