内田也哉子、異例の夫婦対談の裏に本木雅弘の“ぐうの音も出ない一言”9時間超の話し合いは「日常茶飯事」
病床に伏す樹木希林が語っていた、衝撃の言葉
会場がどよめいたのが、希林さんの半年後に内田裕也さんが他界したときの話だ。 「父もいろんな病気を持っていて入退院を繰り返していたので、母に『お母さんが先に亡くなってしまったら、私はお父さんと残されてどうしたらいいの? 』と、思わず心の声を漏らしたら、母が『大丈夫、必ず私が連れて行くから心配しないで』って言われて。その時は『もうまたまた~』と笑ってたんですけど。こればっかりはびっくりしましたね。本当のことはわからないですけど、嵐のように去っていきましたね」 どよどよどよ……。会場にビックリな空気が流れる。偶然としてもすごい話である。 也哉子さんの対談の一番目は谷川俊太郎さんだ。 「おもちゃも与えられなかった幼少期、母の本棚の中の片隅に絵本だけはあって、その一冊が谷川さん翻訳のフランスの絵本『ジョゼット かべを あけて みみで あるく』という絵本で。日本語を耳にしても美しい、目にしても美しい、と感じた初めての本だったので、今砂漠のようになった心に、一滴でも二滴でもいいから、恵みのような言葉を頂きたいと思って。 特に死や両親のことを話すつもりはなかったんですけれど、心の中のもやみたいなものを谷川さんが察知してくださったのか、真っ先に仰ったのが『自分はね、死っていうものを実はすごく楽しみにしてるんだ』という言葉だったんですね」 谷川さんだけでなく、自然と、対談のお相手とは、心のなにかが共鳴するように、大切な家族との生と死について語ることになったという。 伊藤比呂美さんのお父様の骨をコーヒーミルで砕くエピソード、ご自身の死が近づいていることを悟っていた坂本龍一さんとの話など、どれも衝撃的。ただ、生と死、大切な人を弔うという内容は誰しも避けられないテーマ。共感するところのほうが多くあり、客席も、大きく何度も頷く人、口に手を当て聞き入る人の姿が見えた。 ここからは井﨑さんによる、対談の驚くべき裏話。 「普通、対談にはスタッフや編集が何人か同行するのですが、(也哉子さんに)『ついてくるな』と言われまして(笑)。『本当の話っていうのは1対1じゃないと聞けないと思っているので』と。でも原稿が上がってみて、確かに1対1じゃなきゃできない話だなと思いました」 たとえば2回目の小泉今日子さんは、芸能活動を休止しているときだったが、也哉子さんに『当日は一人の人間としてすっきりと也哉子さんの前に座ってみたいと思っています』という一言が来て、話が進んだという。 也哉子さんは「本当は私も会いたかったんですが……」と本音を漏らす井﨑さんに「ごめんなさい~」と恐縮しながらも、 「普段はスタッフがいらっしゃる方も、お一人でポツンといてくださる。そして誰しも持っている影みたいな部分を私が差し出すと、必ず普段は出さない影の部分を出してくれて、これはやっぱり1対1の醍醐味というか。 年齢、状況、経歴、全然違う15人の方々ですが、皆さん本当に一人ぼっちがとってもよく似合うんですよね。自分と仲良くできている人たち。転んだり、擦りむいたりもしてきたけれども、自分の力で立ち上がって歩いてきた人たち。だからこそ優しくて強い。それがすごく共通していたなと思います」