ラーズ・ヌートバー メン・オブ・ザ・イヤー・ブレイクスルー・ベースボール・プレイヤー賞──WBC制覇を牽引したカリフォルニア育ちの侍戦士
ところで、ヌートバーの野球愛は母譲りだ。久美子さんは大の野球ファンだそうで、「彼女はシアトルまで行って、イチローの追っかけをしていたぐらいです」と笑う。一方、ヌートバー本人にとっては野茂英雄投手が最初の「ジャパ ニーズ・ベースボール・ヒーロー」だった。 日本愛、侍ジャパンへの憧れを熱く語るヌー トバーだが、日系初の侍ジャパン選手は諸刃の剣でもあった。プレッシャーは計り知れない。 「僕にとってはおよそ20年ぶりの日本でした。日本語はできないので、代表チームにどう溶け込むのか、多くの不安はありました。でも、初日にダルビッシュと食堂でばったり会い、翌日はバッティングケージで大谷と一緒になったのですが、2人とも『困ったことがあれば、なんでも言って!』と声をかけてくれて。それが本当に大きかったです」 中心選手だけではない。チームの絆はキャンプインの時から感じていた。 「朝から全員一緒に食事をするし、スター選手たちは極めて謙虚でした。日本の魂というか、アイデンティティには感動を覚えました。チーム合流後、みんなが『たっちゃん』と呼んでくれたのは嬉しかったですね」 二刀流でMVPに輝いた大谷翔平、打点王の吉田正尚など、WBCではたくさんのヒーローが生まれたが、原動力となったのは間違いなくヌートバーだ。日本中がもっとも緊張したのは日本の初戦、1次ラウンド プールBの中国戦だった。「タツジ」コールが東京ドームに響く。先頭のヌートバーは、初球、中国先発・王翔の137キロに反応。センター前にはじき返した。地鳴りのような歓声がドームを包む。ペッパーミルのパフォーマンスが生まれた瞬間だ。 「初回の守備、外野守備位置に向かって走っている時には鳥肌が立ちました。そして最初の打席、初球のヒットは一生忘れられません。運も味方して野手の間に飛んでくれた。チームの起爆剤になれたのであれば、ハッピーです」
【関連記事】
- ラーズ・ヌートバー メン・オブ・ザ・イヤー・ブレイクスルー・ベースボール・プレイヤー賞──WBC制覇を牽引したカリフォルニア育ちの侍戦士
- 吉田正尚 メン・オブ・ザ・イヤー・ベスト・ベースボール・プレイヤー賞──フルスイングの侍は、メジャーでも“頂”を目指す
- 「GQ MEN OF THE YEAR 2023」授賞式──2023年のヒーローは、日本と世界を繋ぐ才能たち
- 【エンゼルス・大谷翔平】番記者が語る“オオタニ”の素顔とは?──『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』
- 役所広司 メン・オブ・ザ・イヤー・レジェンダリー・アクター賞 ──芸歴45年のベテラン俳優、パーフェクトな日常