丹波篠山で新種の角竜類を発見「ササヤマグノームス・サエグサイ」 県立人と自然の博物館で展示
兵庫県立人と自然の博物館(三田市)で、新種の角竜類「ササヤマグノームス・サエグサイ」の化石が展示されている。2024年11月10日(日)まで。 【写真】「ササヤマグノームス・サエグサイ関連の画像を見る!」 丹波篠山市に分布する1億1000万年前・白亜紀前期の地層から、2007年から2008年にかけて発掘された恐竜化石について、兵庫県立大学や兵庫県立人と自然の博物館などからなる国際研究チームは、新属新種の角竜類化石であることを解明し、学術誌に発表した。「ササヤマグノームス・サエグサイ」と命名され、アジアで誕生した角竜類が北アメリカへ渡った時期が1億1000万年前である可能性が指摘されるという。 化石は、2007年に地元の地質愛好家・足立冽氏が丹波篠山市宮田で発見した。これを受けた県立人と自然の博物館による予備調査で様々な化石が発見され、翌2008年には同館が主体となって本格的な発掘調査が行われた。トカゲ類、恐竜類、哺乳類を含む多数の脊椎動物の化石が発見されたほか、クリーニング作業の結果、2022年までにこの地点からは5000点を超える骨化石が発見された。 恐竜類の化石は2009年までに3点の角竜類の化石が発見され、同館の三枝春生博士らによる調査で、原始的なネオケラトプス類のものであることがわかった。三枝氏は2022年に亡くなったことから、兵庫県立大学、兵庫県立人と自然の博物館、岡山理科大学、カールトン大学(カナダ)の国際研究チームが調査を引き継いだ。発見当時の3点に加え、2023年までに14点の角竜類化石が確認され、これらを詳しく調べた結果、15点が頭骨で、1点が鳥口骨(肩の骨)、1点が脛骨(後ろ足の骨)とわかった。同じ個体のものである可能性が高いという。 さらに頭骨と鳥口骨に、他のどの角竜類にも見られない3つの特徴があることがわかった。そのため調査チームは、この化石はネオケラトプス類の中でも新属新種の角竜類であるとし、「ササヤマグノームス・サエグサイ」と命名した。「篠山の地下に隠された財宝を守る人」という意味を持ち、篠山層群の岩塊(脊椎動物化石密集層)から発見された小さな角竜類であることにちなんでいる。種小名は長年、丹波地域の恐竜化石発掘調査を指揮してきた故・三枝博士に由来する。 角竜類は、頭部に大きな角やフリルを持つ植物食恐竜のグループで、代表的なものは北アメリカのトリケラトプスが挙げられる。もともとはアジアが起源の恐竜だと考えられており、角竜類がいつ、どのように北半球に広がっていったのかについては諸説ある。 ササヤマグノームスは日本で発掘された角竜類化石では最も保存状態がよく、角竜類ではユーラシア大陸最東端の化石となる。脛骨内部の構造を調べたところ成熟しきっていない若い個体と推測できるという。原始的な角竜類であるため、角やフリルはなく、全長は80センチだったと推定され、県立人と自然の博物館の田中公教主任研究員は「大型犬ぐらいのサイズ」と話す。 また系統解析の結果、北アメリカの原始的な角竜類と極めて近縁であることがわかった。これはアジアで誕生した角竜類が北アメリカに渡った時期が1億1000万年前である可能性を示唆している。この時期、ユーラシア大陸東部と北米大陸西部が「ベーリング陸橋」によって繋がっており、多くの動物が両大陸を行き来できるようになった。また当時は気温が高く北極圏には森林が存在していたと考えられている。今回の発見は新属新種というだけでなくアジアで生まれた角竜類が北アメリカにまで生息域を広げた可能性まで示している。 化石の第1発見者の足立氏は、「こんなに大事になるとは思ってもみなかった。研究が進んでいることも知らなかった。三枝先生は亡くなってしまったが、名前がつくのは当然」と話した。
ラジオ関西