九州地区大会準々決勝の日南学園戦、神村学園・入来田の適時打で生還する藤田（中央）

　バント空振りなど、らしからぬプレーが続く。２０２３年１１月２日、九州地区大会準決勝の熊本国府戦。１点を先取したが、終盤には四球も絡み７点を奪われて逆転負けした。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 　「えっと思う場面ばかりだった。１０安打で１点とリズムにも乗れなかった」。そう振り返る小田大介監督だが、試合後、選手に「よくやった」と語りかけた。けが人が続出し、疲労も蓄積し切った現状があった。「野球の神様が『これ以上野球をするともっとひどいことになりかねない』と止めてくれたのかもしれない」 　主砲の正林輝大（２年）は１０月の国体で左足を疲労骨折。甲子園で打率５割を記録した上川床勇希（同）はその夏の鹿児島大会の時から左手指を骨折していた。他にも腰や肩の張り、違和感を訴える選手が相次いでいた。 　その背景には過酷なスケジュールがあった。甲子園準決勝で仙台育英に負けた翌８月２２日には九州地区大会県予選が始まり、神村学園は新チームに衣替え。同２８日には初戦の樟南第二戦に臨む。９月１３日の決勝、れいめい戦を含め計５試合を戦い切った。その後、再び前チームで鹿児島国体に臨み、ほどなく新チームで九州地区大会。「新チームにどんな特徴があるのか、まだ模索中」。小田監督は昨年末ごろまでそんな戸惑いがあった。 　手負いの状態ながら、九州地区大会は前チームから残るメンバーが中心になり、県予選から１試合ずつ勝ち上がった。 　本来は遊撃手ながらどこでも守れる藤田侑駿（同）を一塁手にコンバートし、無駄な点はやらない野球を徹底。打では入来田華月（１年）が出塁し、バントがうまく俊足も光る２番、増田有紀（２年）がチャンスを拡大し、今岡拓夢（１年）、正林、岩下吏玖（２年）のクリーンアップで確実に還す。更に、その後に控える６番の上川床らが「第２クリーンアップ」として機能。どの打順でも相手が気を抜けない打線となった。上川床は「投手にとって完璧な球を打つことに意味がある」と力を込める。 　投手も最速１４１キロのエース左腕、今村拓未（同）に加え、右腕、早瀬朔（１年）ら２番手以下も成長してきた。早瀬は「守る時間が短くなるよう、リズム良くストライクを投げたい」と前向きだ。 　冬を越え、選手たちは一回り体も大きくなり、小田監督も「守りから攻撃に移っていくチーム」と特徴をつかめるようになった。レギュラー陣のけがも癒え、戦力も充実してきた。【梅山崇】