世界戦中止でファイトマネーはどうなる?挑戦者の2.9キロ体重超過でWBO王者田中恒成陣営を激怒させた舞台裏で何が起きていたのか…日本では前例のない決断の理由とは?
プロボクシングのトリプル世界戦「LIVEBOXING 9 」の前日計量が19日、東京ドームホテルで行われ、WBO世界スーパーフライ級王者の田中恒成(29、畑中)は52.1キロのリミットジャストでパスしたが、挑戦者の同級12位ジョナタン・ロドリゲス(28、メキシコ)が2.9キロの体重超過の愚挙を犯し、再計量でも落とすことができずV1戦は中止となった。痙攣を起こしたロドリゲスの体調と2階級上に相当する体重差の危険を考えての決断。畑中清詞会長(57)は「ボクシングを辞めた方がいい」と激怒。主催者側はチケットの払い戻しなどの対応に追われた。減量失敗が目立つ中での試合中止の決断をJBCは「今後は主流になるかもしれない」と捉えた。ファイトマネーの行方も含めた裏舞台をレポートした。 【画像】史上最強のSEXYクイーンら4人の“美ボディ”ラウンドガールが世界戦に登場!
計量会場がざわめいた。 WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチの計量では、まず王者の田中が52.1キロのリミットちょうどでパスしたが、どうもロドリゲスの様子がおかしい。計量器がバスタオルで隠され、挑戦者はパンツを脱いで秤に乗ったが、会場内にアナウンスされた数字はなんと55.0キロ。2.9キロの大幅の体重超過だ。立会人と共にデジタル表示を覗き込んだ畑中会長の顔色はみるみる変わりロドリゲスを睨みつけた。田中は特別のリアクションを示すことなく電解質の水を空っぽの胃袋に流し込んだ。なんとも間の抜けた写真撮影と恒例のフェイスオフが行われた。田中は顔を近づけて睨みつけたが、ロドリゲスは、目が落ち込み幽霊みたいな顔をしていた。2時間の猶予が与えられた再計量に臨むため、プロモーターとトレーナーと共にいそいそと会場から出ていった。 田中は先に囲み取材に応じた、 「対戦相手のオーバーは初めて。試合前日にもなって相手の心配というか、状況を考えてもしょうがない。僕にはやるべきことがたくさんある。集中します。怒り?僕にはどうすることもできないので、そういう感情はない。再計量でも落とすのは無理でしょう。55キロだから、ほぼほぼ2階級上。もともとパワーがあるので警戒するし怖さはあるが、明日は思いきりやります。暴れます。戦う気満々なんで」 過去の日本での世界戦では、体重超過が起きた場合、当日体重に制限を設けた上で試合が実施されるケースがほとんどだった。昨年6月に行われた井岡一翔(志成)とジョシュア・フランコ(米国)とのWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチでは、王者のフランコが3.1キロ超過の55.2キロでクリアできず、2時間の猶予後の再計量でも、わずか200グラムしか落とせず、2.9キロオーバーで王座が剥奪されたが、当日午前10時の計量で58.9キロ以内を条件に試合は実施され、井岡が判定勝利して新王者となった。 それでも田中の父でトレーナーの斉さんは「2階級上の選手とやる必要はない」と怒りを込めて訴えた。ロドリゲスの55.0キロは、ほぼ55.34キロが、リミットのスーパーバンタム級の体重。階級別のスポーツにおいて、この体重差は危険だ。 ロドリゲスのプロモーターであるパコ・ダミアン氏によると、軽いランニングとスパに入り、再度減量を試みたが、足に痙攣を起こして部屋で寝込む状況となったため、再計量の時間まで1時間残して「体へのリスクを考えるとこれ以上できない」とギブアップ。この体調で試合を行うことは難しいと判断して主催者側に出場辞退を申し入れた。 畑中会長も「健康管理上危ないということだったが、2階級上の選手とウチの選手をやらせるわけにはいかない。そういう例を作るのも悪いことだ。今後こういう外国人選手が増えても困るんで」と試合中止を求めた。危険性に加えWBOでは「王者は負けても保持」の他団体と違い、体重超過の相手と戦い、王者が負けた場合は空位となるため、戦うことにリスクしかない。
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