ユナイテッドアローズ松崎善則社長「若者に選ばれる企業に、新販売員評価制度も導入」
令和時代に“売れる販売員”の姿は
―昨年始動した様々な新プロジェクトについてお聞きしたいと思います。まずはデジタルにも精通する販売員を評価する「DXセールスマスター制度」に関して、導入の背景を教えてください。 コロナ禍に入ってから、チャット接客や商品紹介のスタイリング画像を投稿するといった、デジタルを活用した施策に注力して取り組んできたものの、実際にその活動が店舗メンバーの評価体系には入っておらず、それが売り上げにどのぐらい貢献しているのかをきちんと測って評価に繋げられていない課題がありました。そのような中でも際立って“引き”のあるメンバーが見えてきたので、店頭接客だけではない「マルチな接客」ができる社員をきちんと評価したいという考えで制度を設けました。今までの評価基準では顧客数などの指標で評価をするので、どうしても「社歴が長いメンバーが販売力がある」という評価になりがちでしたが、当社の中では社歴が浅いメンバーの方がデジタルコミュニケーションに慣れていることもあり、若手にもスポットが当たるのは良い効果だなと思います。 ■DXセールスマスター制度 OMOを推進できる人材の育成を目的に設立。販売員を対象に、店舗における販売実績などから評価する同社独自の認定制度「セールスマスター」に対し、DXセールスマスターでは自社ECにおけるスタイリング投稿の本数や、直接売上、PV、お気に入り登録数が社内最上位ランクであるといったDX活動の実績に優れた人材を評価し、他の販売員にとってロールモデルとなる存在を創出する。任期は1年で、認定された場合は年2回の賞与にインセンティブを上乗せして支給される。 ―現場のモチベーションも変化しそうですね。 今までは店頭接客の合間にSNS投稿などの業務をやってもらう程度でした。それを「接客の一環」として躊躇なく取り組めるというのは、店頭現場のメンバーからしても非常にやりやすい環境になっているのではないかと思います。 ―教育の部分で工夫されていることは? CDO(最高デジタル責任者の藤原義昭氏)がSNS運用などのデジタル周りの知識に長けているので、これまで実施できていなかったマーケティングやデータ分析を体系的に店舗メンバーにも教える時間を作ってくれています。 ―販売員もデジタルマーケティング力が必要。求められるスキルが幅広くなりました。 そうですね。接客していない時間のお客様の行動や購買心理を汲んで差し上げることができないと購入には繋がらない。そこは過去と違って難しくなってきたと思います。これまでは「どういう情報を持ってきているのか」「どのぐらい何を見てきた」という情報を知らずに接客していたのが、現代はそれを知っていないと会話が成立しなくなってきている。そういう難しさはありますね。 ―販売員を経験されてきた松崎社長の視点で考える、これからの時代に活躍できる販売員の人物像とは? そうですね......礼儀正しく、 間違いない接客をするというのは大前提として必要ですが、やはりこれまで以上に「個性」が大事になってくると思います。SNSにしても、スタイリング投稿の着こなしにしてもそうですが、よく見られるメンバーとそうではないメンバーの違いは、パーソナリティにあるのではないか。ちょっと弾けていたり、変わっているぐらいの方が活躍できる状況と感じています。 ―そういった人材を積極採用しているのでしょうか。 これは後天的なものである気がしているので、導入段階でちょっと変わっているなという人を意識して採用しているわけではありません。個性を発揮できる風土作りが非常に重要と考えています。 ―SNSのフォロワー数は重要ですか? 単にフォロワー数が多いことだけではないと考えていますので、そこまでは重要視していないです。 ―若手はデジタルを駆使できるという強みがある一方、ベテランはリアルの接客力に長けている。これは単純に考えると、単価的にはやはりベテランの方が高くなるのではという印象があるのですが。 おっしゃる通りです。販売メンバーの活躍にも多様性というのがあっていいと思っています。今回、DXセールスマスター制度を立ち上げましたが、従来のセールスマスター制度も継続します。どちらがいいというわけではなく、DXセールスマスターを通じてセールスマスターになる方もいるでしょうし、逆もあるでしょう。家庭の事情で勤務時間が短いメンバーもDXをうまく活用できれば活躍できるので、そういった多様性は出てきたかなと思います。