日銀は今月マイナス金利解除も、春闘「思ったより強い」-翁百合氏
(ブルームバーグ): 日本銀行出身で政府税制調査会会長の翁百合氏は、満額回答の相次ぐ春闘の賃上げ動向は想定より強く、日銀は来週の金融政策決定会合でマイナス金利解除などの政策正常化に踏み切る可能性があるとの見解を示した。
日本総合研究所理事長の翁氏は14日のインタビューで、13日に集中回答日を迎えた春闘について「全体的に高く、満額回答や要求より高い回答もあり、思ったより強い」と指摘。解除時期を3月か4月とみていたが、「3月の可能性もあるのではないか」と語った。現状の経済・物価情勢を踏まえると、マイナス金利解除の条件となる「2%物価上昇率というのがだんだん見えてきている」との認識を示した。
上場投資信託(ETF)の買い入れやイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の見直しに関しても、「マイナス金利解除という一つの大きな区切りのタイミングで、発信するのは一つの在り方だ」と述べた。
1月会合以降、正副総裁ら幹部から正常化に前向きな発言が相次ぎ、日銀は3月か4月に政策変更を行うとの見方が市場では支配的だ。集中回答日の好調な賃上げを受けて足元では今月解除の観測が急速に強まっており、昨年の副総裁人事で有力候補とされた翁氏の見解もこれに沿った形だ。
慎重に正常化
昨年10-12月期の実質国内総生産(GDP)は改定値でプラスに転じ、2四半期連続で経済が縮小するテクニカル・リセッション(景気後退)入りを回避したものの、個人消費は3四半期連続でマイナスが続いている。
翁氏は、円安が輸出企業の収益を押し上げ、企業の賃上げ機運や設備投資意欲を高めている一方、円安による物価高は個人消費に影響していると指摘。正常化開始後の金融政策運営は「相当緩和気味にやっていくと思うし、景気や物価の状況を見ながら、慎重にだんだんと正常化を進めていく」との見方を示した。
昨年1月、経済界や学界の有志でつくる令和国民会議(令和臨調)のメンバーとして、政府・日銀に新たな共同声明の作成を求める緊急提言を行った。消費者物価上昇率2%を「長期的な物価安定の目標として新たに位置付ける」ほか、共通目標として「両者の連携により、生産性向上、賃金上昇、安定的な物価上昇が起こる持続的な経済成長が実現するための環境を作る」よう求めた。