市境で見守る1対の仁王像 石龕寺の像がモデル 連載”まちの世間遺産”/兵庫・丹波市
当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波市山南町井原の国道175号沿いに立つ1対の「さんなん仁王像」です。 「阿吽の呼吸」で見守る仁王像―。簡易パーキング「さんなん仁王」と、はす向かいにある「山南であい公園」に立つ仁王像は、いずれも山南ライオンズクラブが建立したもので、石龕寺(丹波市山南町岩屋)の仁王門に鎮座する像の実物大。迫力ある表情で地域を見守っている。
簡易パーキングにある「阿像」は、1992年(平成4)に同クラブが創立25周年に建立。同公園の「吽像」は97年(同9)に30周年を記念して設置したもので、阿像の建立から5年後に”対”になった。どちらも鎌倉時代初期に仏師、定慶によって作られた、国の重要文化財に指定されている同寺の仁王像がモデル。 設置当時の丹波新聞の記事によると、阿像は「樹脂製」で、同町岩屋出身の彫刻家、和田真澄さんが制作。一方の吽像は、「中国福建省南安から産出したピンク系の御影石を用い、中国の業者に制作を依頼した」とある。 92年当時、同クラブ事業委員長だった田中庸介さん(94)は、「(阿像は)3つか4つに分けてつくられており、市外の和田さんのアトリエからトラックで山南町に運び、クレーンでつって組み上げた」と懐かしむ。「山南ライオンズクラブは、ほかにも周年行事でモニュメントを設置した。永久に残るようなものができたと思っている」と話している。