「別居期間が長くても相手が合意しないと離婚できない」という日本の制度は、じつは先進国では少数派だという「意外な事実」
離婚給付に関する法意識
離婚給付については、子の養育費(監護費用)のほか、財産分与と慰謝料が認められている。しかし、財産分与は夫婦の協力によって築いた財産の半分であるところ、財産が小さければ少額にしかならない。慰謝料はいずれにせよおおむね少額だし、前記のような被告の「有責性」の立証が必要になる。 この問題を、欧米では、「離婚後扶養としての離婚給付」というかたちで解決している。簡単にいえば、「婚姻の破綻が配偶者各自の生活条件に生み出した格差の補償」ということであり、たとえば、妻が結婚によって失った職業上のキャリアをカヴァーするといった観点が重要になる。一時金で払いきれなければ分割とされる。具体的な制度は異なるものの、ヨーロッパでもアメリカでも、この負担は重く、履行確保のための方法も、厳しい制裁を含め確保されている。 しかし、これについては、日本では消極的な見方が優勢だ。法学部、法科大学院の女子学生にさえ、「特に相手が悪いわけでもないのに、そうした負担まで負わせるのは気が引ける」と言う人が結構いる。確かに、私自身も、裁判官時代には、「日本では離婚後扶養は現実性のない考え方かな」と思っていた。 だが、大学に移った後の調査研究により、離婚した妻とその同居の子どもたちの貧困率の高さや厳しい生活の実情を知るにつけ、やはり、日本でも、今後はこれを一定の限度で認めてゆくべきではないかと考えるようになった。婚姻期間がある程度長ければ、たとえば、夫の手取収入額の一年間分あるいはその半分程度のそれは、認めてもよいのではないだろうか。履行確保のための方法も、併せて整えられる必要がある。 以上のような制度を認めるなら、離婚慰謝料については、相手の悪性が特に高い場合を除き認めるとしても定型的な金額とし、それによって、離婚給付という側面でも有責性の主張立証はごく簡潔なもので足りることとする方向に舵を切ることができる。 読者の方々も、あなたが男性である場合には、あなたの娘や姉妹が離婚する場合のことをも念頭に置いて、考えてみていただきたい。
【関連記事】
- 【つづきを読む】日本の離婚法は、国際標準の「現代」が実現できていないという「残念な現実」…「DV等被害者の人権」が国家によって守られる海外との「極端な違い」
- 【もっと読む】配偶者の不貞の相手に慰謝料を請求するのは、「配偶者をモノのように支配している」との思想から!? 「不貞慰謝料請求肯定論」の根底にある「配偶者は自分の所有物」という考え
- 【もっと読む】「同性婚カップルが子をもつことを認める? 認めない?」…日本人が知っておくべき「同性婚に関する重大な法的知識」
- なんと現代日本人の「法リテラシー」は江戸時代の庶民よりも低かった?…あまりにも「前近代的」すぎる現代人の法意識
- なぜ日本では「国際標準」を満たさない法が定められるのか?…日本人の法意識にひそむ「闇」を暴く!