『凶悪』から11年…白石和彌監督、山田孝之と再タッグを組んだ新作『十一人の賊軍』は「残りの監督人生の出発点になる作品」
怖さを更新し続ける阿部サダヲ、イケメン枠のナダル、即死する音尾琢磨…個性的なキャスティングの理由
――今回、他にもすごく面白いキャスティングをされてますよね。 白石監督:お、それは特に誰が気になりましたか?(笑) ――官軍側で出ていたナダルさんですね。ナダルさんっぽい人が出てるなと思ったら、アップになってもナダルさんだったので驚きました。賊軍側には、元モー娘。の鞘師里保さんが女郎役で出ていたり、出家されたせいじさんが坊主役で出ていたり、かなり個性的に感じました。 白石監督:賊軍は“ごった煮”にしたかったんです。歌舞伎俳優がいたり、アイドルがいたり、相撲取りがいたり。でも、官軍たちは結構イケメンにしたいと思いました。ナダルさんもイケメンじゃないですか。目とか、顔のパーツは。 ――そうかもしれないです…!兄弟役の佐野岳さんともよく似ていたので驚きました。 白石監督:あの二人が似てるとネットで話題だったんです。だからプロデューサーから「どう?」って。 ――基本的にはシリアスな展開ですが、ナダルさんやせいじさんがいたり、山田さんのキャラクターだったりで笑える要素もある。そういうところは意識しましたか? 白石監督:話自体が全員知らないとはいえ、死んでいく話だから、暗いは暗いじゃないですか。だから意識してのほほんとしているシーンも入れました。阿部サダヲのところは酷いけどね(笑)。 ――阿部さんは『死刑にいたる病』よりも怖かったです。 白石監督:阿部サダヲの怖さを更新し続けます(笑)。 ――この残酷な物語の元凶である、新発田藩の城代家老・溝口内匠をお願いしたいというのは、やっぱり阿部さんへの信頼感だったのでしょうか? 白石監督:この話は主人公たち“賊軍”を描いているけれど、笠原さんが一番描きたかったのは溝口だと思ったんです。中間管理職として、藩も守らなきゃいけない、殿も守らなきゃいけない。そのために苦渋の選択をしていって、その内のいくつかが、「賊軍を送ろう」だったり、同盟軍を退散させるために信じられない作戦したりとか。結構トリッキーなんだけど、溝口なりに一生懸命やってる。新発田城にいる溝口匠をずっと忙しくしたかった(笑)。 ――爺っつぁん(本山力)をはじめ賊軍たちの戦い方も、エンタメ色が盛り込まれてて男心をくすぐりそうだなと感じたのですが、そういうところにも監督の意向が詰まってましたか? 白石監督:はい、入ってますね!戦い自体は泥臭いけど、どこかポップにしないと、本当に悲惨な話になってしまうので、それは割と意識しました。 ――特にこだわった戦い方、散り方みたいなのはありますか? 白石監督:死に方は見せ場になるようにしましたね。一瞬で死ぬやつもいるんですけど。 ――白石組の常連の音尾さんは即死でしたね(笑)。 白石監督:音尾さんは5カット目くらいで死んじゃう(笑)。 「別の舞台で頭しかいれません」って言うから。「最初に殺される役でもいい?」って言ったら、「ありがとうございます」って。 ――音尾さんの即死は見どころですね(笑)。