全国最多当選の首長引退の町、無投票で新トップ決まる 次点の村でも
現役首長で全国最多の当選11回を重ねた現職の引退に伴う山梨県早川町長選と、2位の当選10回の現職が退く大分県姫島村長選が29日にそれぞれ告示された。いずれも無投票で新顔が初当選し、新たなかじ取り役が決まった。 【写真】出陣式で決意表明する大海靖治氏(右端)=2024年10月29日午前8時43分、大分県姫島村、貞松慎二郎撮影 ■山梨県早川町、44年ぶりに町長交代 早川町長選は29日、告示され、無所属新顔で元教育長の深沢肇氏(69)のほかに立候補の届け出がなく、深沢氏の初当選が無投票で決まった。現職首長で全国最多の当選11回を重ねた辻一幸町長(84)の任期は11月15日に満了し、44年ぶりに町長が交代する。 早川町は県南西部の南アルプスのふもとに位置する人口900人弱の山あいの地域。深沢氏は29日の告示後、「町の人口を増やすことより、住んでいる人たちが自信と誇りを持ち、安心して住み続けられる町づくりを重視したい」と取材に語った。 深沢氏は町職員出身で、辻氏が町長選で初当選した1980年に入庁。辻氏の下で町民課長などを務め、2011年から15年までは教育長だった。 辻氏は昨年、体調不良を理由に引退を表明。辻氏が次の町長候補を探して町職員の出身者らに声をかけたのがきっかけで、深沢氏が立候補を決意したという。辻氏は後継指名はしないとしながらも、深沢氏を「適任者」としている。 深沢氏は町長を44年間務めた辻氏の手腕を評価する一方、「時代に合わない施策は改革する」と述べ、行財政改革や災害対策の見直しに意欲を示す。 行財政改革では、第三者組織による事業の見直しに取り組む方針だ。また、地域の医療体制を安定させるため、近隣5町による連携をさらに強めたいとしている。 28日現在の選挙人名簿登録者数は789人。(豊平森、池田拓哉) ■親子2代で64年の大分県姫島村は、元大分県職員 10期目で、現職では全国2番目の多選首長となっている大分県姫島村でも29日、任期満了に伴う村長選が告示され、新顔で元県課長の大海靖治氏(60)が無所属で立候補し、無投票で初当選した。今期限りで引退する藤本昭夫村長(81)の後継として立ち、40年ぶりに村のトップが交代する。 姫島村は、瀬戸内海の周防灘に浮かぶ姫島にある、大分県で唯一の村。人口は約1700人、車エビの養殖を中心とした水産業が盛んだ。 藤本村長は1984年、7期連続無投票で村長を務めた父・熊雄氏の急死を受けて立候補し、初当選。熊雄氏が就任した1960年から、親子2代で64年間にわたって村をリードしてきた。 この日の朝、大海氏の出陣式に姿を見せた藤本村長は、「私の40年にわたる路線を引き継ぎながら、新しい視点で取り組んでいただきたい」と激励した。村出身で7月に藤本村長から立候補を打診されたという大海氏は「これまでの行政経験を生かして村の発展のために全身全霊を尽くす」と語った。 28日現在の選挙人名簿登録者数は1577人。(貞松慎二郎)
朝日新聞社