ハリルジャパンの2段階選手選考方式の是非。カズの悲劇を繰り返すな!
6月14日に開幕するワールドカップ・ロシア大会に臨む日本代表メンバー23人が、二段階に分けて絞り込まれることが濃厚になった。現在行われているベルギー遠征へ招集された26人が発表された15日の記者会見で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が明らかにした。 ロシア大会へ向けては5月14日が最大35人の予備登録、6月4日が23人の本登録の期限となっている。ハリルホジッチ監督は28人前後を予備登録メンバーとして招集し、ガーナ代表を日産スタジアムに迎える壮行試合から一夜明けた5月31日に、23人に絞り込むプランを描いている。 ワールドカップに臨む日本代表が二段階をへて選ばれるのは、悲願の初出場を果たした1998年のフランス大会以来となる。このときは25人から22人に絞り込まれ、外れた3人のなかに1990年代の日本をけん引してきたFWカズ(三浦知良)が含まれていたことが大きな衝撃を与えた。 当時の岡田武史監督(現日本サッカー協会副会長)が「外れるのはカズ、三浦カズ」と最初に発したセリフはいまでも有名だ。対照的に2002年の日韓共催大会以降の4大会は、すべて5月中旬の段階で23人を最終決定。その後のキャンプで一体感を高め、本大会を迎えてきた。 5大会、20年ぶりに二段階選考を復活させる意図を、ハリルホジッチ監督は件の記者会見の席上でこう説明していた。 「素晴らしい人間性をもった選手が日本には多い。具体的な名前は出さないが、私が関わる選手には本当に愛着がある。しかし、そのときにいい選手でなければならない。23人に入る基準はいろいろある。規律の問題で排除するのは簡単かもしれないが、フットボール面では非常に難しい作業になる」
今回のベルギー遠征にはハリルジャパンの常連であり、ロシア大会出場を決めた昨年8月のオーストラリア代表戦でともにゴールを決めながら、所属クラブで出場機会を失っているFW浅野拓磨(シュツットガルト)とMF井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)が選外となった。 彼らに加えて、ゴール数が足りないという理由で外れたFW乾貴士(エイバル)や、負傷で戦列を離れているMF香川真司(ボルシア・ドルトムント)、MF清武弘嗣(セレッソ大阪)らに最後のチャンスを与える狙いも込められているはずだ。 本登録直前までグループ内の競争意識が高まることで生じるメリットがある一方で、もしかしたら自分が外れるかもしれない、という過度のプレッシャーとも戦いながら、5月下旬から国内キャンプに臨むことで生じるデメリットもあるかもしれない。 ワールドカップ代表に4度選出された実績をもつGK川口能活(SC相模原)は、二段階選考が導入されたフランス大会を戦った、第1次岡田ジャパンが置かれた状態をこう振り返る。 「あのときはすべてが初めてだったので、とにかくワールドカップ代表に選ばれるために、選手全員がハードワークした記憶しかありませんでした」 結果として前年からなかなかコンディションが上がらず、なおかつ最もネームバリューのあったカズが外れたことで、いまでも「カズの悲劇」と呼ばれる社会現象を呼び起こした。 川口自身もその後の3大会では、5月中旬までに23人が発表される選考方式を経験した。そのなかには再登板した岡田監督のもとで臨んだ、2010年の南アフリカ大会も含まれている。2つの方式の差異を感じたうえで、川口は二段階選考にこう言及した。 「ある程度決まっている当確の選手たちと、微妙な当落線上の選手たちとに分かれると思うので、選手間の関係で言えば非常に難しい、デリケートな時期になるかもしれません。それでも、ワールドカップという舞台を戦うということは、そういうものを犠牲にすることでもあると思うんですね。 競争が促されるなかから生まれる集団がいいのか、まとまった集団を作ってそのままいくのがいいのかはちょっとわかりません。ただ、ハリルホジッチ監督としては対戦相手に対してぎりぎりまでメンバーを教えないというか、情報をかく乱するといった狙いも多少あるのかなと思っていますけど」