「命がけで」生放送でプーチンを批判したロシア人にウクライナ人が激怒した「意外過ぎる」ワケ
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第12回 『「プーチンに命を狙われる」ロシア人記者が国を捨てウクライナへ突撃取材…その実態はまるで「スパイ映画」』より続く
戦地キエフへ
わたしたちは小さなホテルの駐車場に入り、荷物を部屋に置いて新しい携帯電話を買いに町に出た。携帯を買って接続すると『ヴェルト』から公式メールが届いていた。 「マリーナ・オフシャンニコワは『ヴェルト』のフリーランス記者です。オフシャンニコワはウクライナの現状を取材します」そう告げる広報PRの下には、あす朝、キエフに出発してよい、というメッセージがあった。 ピーターに見せた。 「ベルリンは気でも触れたんでしょう」 百戦錬磨のセキュリティアドバイザーのピーターは憤慨した。 「あなたには公式の記者登録証が必要です。軍事行動ゾーンです。ところが、あなたのはロシアのパスポートです。このままだと最初のチェックポイントで逮捕されますよ。わたしはどこへも行くつもりはありません。まずウクライナ政府の記者登録証と、国境でわたしたちを出迎え、キーウまで送り届けてくれる人が必要です」 その通りだった。ウクライナ政府の公式の許可なくキエフへ行くのはきわめて危険だ。ベルリンはあと何日か待つよう言ってきた。早々にウクライナのしかるべき人物と連絡をつけ、組織的な問題はすべて解決すると約束してくれた。