島田珠代だけじゃない…間寛平GMのもとで進化する65周年の「吉本新喜劇」、未来を担う「新世代」の芸人たち
新喜劇で売れる過酷さ
そのネタバトルの年間チャンピオンとして、佐藤太一郎、小西武蔵、五十嵐さきによるユニット『人間ごっこSラボ』が選ばれた。この人間ごっこ優勝のニュースは、僕にとっては感慨深いものがある。ここで少し長くなるが、個人的な話をさせてもらいたい。 チャンピオンとなった小西武蔵と佐藤太一郎さんは、昔からの知り合いだ。特に小西とは関係性が古くて、彼が新喜劇に加入する前から知っている。 小西はお笑いのセンスがあって、たしかな才能を持っていた。彼のトリオ、『ヒップスター』のコントは抜群に面白かった。しかし残念ながら、このトリオは解散してしまった。 お笑い芸人としての才能がいくらあっても、漫才やコントで成功できるかどうかはわからない。相方との相性もあるし、不仲で喧嘩別れすることもある。相方が芸人を辞めたいと言えば、どれだけ本人が続けたくても、コンビは解散となる。そこは才能とはまた別次元の話となる。 運に恵まれずコンビを解散した芸人は、新喜劇に救いの手を求めるケースが多い。ここで才能が開花することもある。 小籔千豊さんやすっちーさんは、まさにその代表例だ。二人とも漫才コンビを解散して新喜劇の門を叩いた。お二人の面白さは説明しなくてもわかる。どれだけ面白くてもコンビで売れないケースもあるという恰好の例だ。 だから新喜劇は、吉本芸人の再生工場の側面もある。小西もその道を選び、新喜劇でセカンドチャンスを掴むことにした。 小西の口から新喜劇に入ると聞かされたとき、「小西だったらすぐに座長になれる」と励ました。これはまぎれもなく本心だった。小西の才能があれば、いずれ小籔さんやすっちーさんのようになれる。そう気楽に考えていた。 ところがその見通しは甘かった。小西は何かに呪われたように、一向に新喜劇で芽が出なかった。小西がなぜ売れないんだろう? 当初その理由がわからなかったが、次第に理解し始めた。 新喜劇の座員は、当初一つ二つの台詞しか与えられない。しかも新喜劇は集団で笑いを作る。若手の座員が台本を無視して、ボケまくったりはできない。でも目立つには、何か人と違うことをしなければならない。 まさに矛盾だ。新喜劇で売れる過酷さが、だんだんわかってきた。