中国人民銀、預金準備率引き下げに足踏み-米次期政権前に政策余地
(ブルームバーグ): 中国人民銀行(中央銀行)は2024年末に、注目されていた景気刺激策は用いず、市場に大量の流動性を注入した。米国のトランプ次期大統領の就任を前に政策の余地を確保する狙いがあった。
人民銀行は以前、昨年末までに市中銀行の預金準備率をあと1回引き下げることで、銀行にさらに多くの資金の余地を作ると示唆していた。米次期政権が新たな関税を課した場合の悪影響を緩和する手段を温存するため、今では、この引き下げは今年1-3月期(第1四半期)に行われるとみられている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の邢兆鵬シニアストラテジストは「預金準備率の引き下げは、関税リスクへの対処と市場の安定化という役割を担っているため、米国が関税を引き上げる時期まで先送りされる可能性が高い」と述べた。また、1月28日に始まる春節(旧正月)の休暇前に実施される可能性があるとの見方も示した。
中国経済は、政府が9月下旬に大規模な景気刺激策を打ち出して以来、回復の兆しを見せているが、米国との貿易戦争の可能性により、成長の見通しは依然として厳しい。2025年の流動性については、銀行が経済に貸し付けを行うのに十分な資金を確保するため、政府首脳はより積極的な態度を示唆している。また、今後数年間で国債売りが増加した場合、その債券を吸収するための市場資金も必要となる。
通貨、債券
人民銀行が預金準備率の引き下げを急がない理由は複数ある。人民元の安定化や、国債相場のさらなる高騰の回避もその一つだ。
預金準備率の引き下げは、金融緩和の強いシグナルとなり通貨に下押し圧力がかかるため、通常は小出しに行われる。引き下げれば、ドル建て資産に比べて人民元資産の利回りが低下し、資本流出につながる可能性がある。
政府系シンクタンク中国国家金融・発展実験室(NIFD)のブルース・パン特別上級研究員は、1月に米金融当局がより緩和的なシグナルを発した場合、春節を前に人民銀行が預金準備率を引き下げる余地がさらに広がると述べた。