筒香嘉智に3億? 選手にカネを払い過ぎる/廣岡達朗コラム
楽を覚えさせたら人間は堕落する
今の球界は選手にカネを払いすぎである。ベンチを温めているだけでは十分に年俸をもらえないという契約に変えればいいのだ。そうすれば、選手は一生懸命にやる。 メジャーから古巣に復帰した筒香嘉智の年俸は3年契約で2年目までは3億円とされる。3000万円で十分だ。3000万円を基準にして、具体的にこれだけ働いたらインセンティブで上乗せするという契約内容にすべきだ。“どんぶり勘定”など大間違いだ。 坂本勇人も億単位の年俸をもらいながら、なぜ休養しながらの出場なのか。試合に出られなければ引退すればいい。出るというから球団は何億と保障しているのに、休むのは観客をバカにしている証拠だ。巨人の90年の伝統をチームの顔として築いた長嶋茂雄も王貞治も全試合出場を責務としていた。実際に坂本は三塁手としてもいい守備をしているのだから、休む必などないのだ。 ヤクルトも相変わらずケガ人が多い。5月11日の巨人戦(神宮)では初回、先頭打者の塩見泰隆が一塁ベースを駆け抜けた際に、左ヒザを負傷。なんのために2月のキャンプでトレーニングをしてきたのか。 「休んだほうがいい」と首脳陣が楽を覚えさせたら人間は堕落する。痛いと言えば休めると思ったら、痛い、痛いと言いたくなるのが人間である。それでカネをもらえるのなら、こんなに楽な商売もない。 若松勉(元ヤクルト)、石毛宏典(元西武ほか)にしても、重傷を負ったことがあった。監督の私は無理かなと思いつつ、休ませるのはチームとして痛い。「ベンチに入れ」と強行出場させると彼らは結果を出した。人間はやる気があればできるのだ。それを教えてやらなければいけない。 ●廣岡達朗(ひろおか・たつろう) 1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。 『週刊ベースボール』2024年5月27日号(5月15日発売)より 写真=BBM
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