大切な人の喪失「悲しみと後悔」にどう向き合うか 11月23日の「グリーフを考える日」を前に改めて考える
悲しみのあまり、亡き人のことさえも考えたくないと思ってしまう人もいることでしょう。 「考えることに疲れてしまって……。パソコンのように強制終了するボタンが私にあったらいいのに……」 このように話してくれたのは、在宅での介護を長く続けた末に、母親を看取った60代の女性です。 「家のどこにいても、母との思い出にあふれていて、頭の中はいつも母のことでいっぱいなんです。母は在宅介護で幸せだったのか、私は十分な介護ができたのか……。
もっとこうしておけばよかった、あれも食べさせてあげたかったと、同じことをぐるぐると考えてしまう。もう疲れてしまって……。 何も考えたくないし、母がいたことも忘れたいと思うことさえあるんです。薄情な娘ですよね……」 あれこれ考えすぎてしまってどうしようもないときは、「考えない」ことも、一つの知恵ではないでしょうか。今のつらい時間をやりすごすのです。 いろいろなことを考えずに、目の前のことだけに集中してみるといいかもしれません。仕事や家事、趣味など、時間に追われながら、一日を淡々と過ごすのもいいと思います。
亡き人のことを忘れようとするのではありません。 その必要はないですし、そもそも忘れようと思っても、忘れられるものではないでしょう。 日常の生活に没頭して、亡き人のことを考えずに、悲しみから距離を置くといえばいいかもしれません。 ■何も考えたくない日は水回りの掃除 乳がんで母親を亡くした60代の女性は、次のような話をしてくれました。 「何も考えたくない日は、家の水回りの掃除をすることに決めています。トイレやお風呂や台所を、一心に磨くんです。少しの間だけど、何もかも忘れることができて、時間が過ぎていることがあります」
また、「妻は旅行に行っていると思って毎日を過ごしている」と話す70代の男性もいました。 「妻が亡くなったことを忘れたいんです。今もどこかで生きているって、そう思いたい。だから僕は妻がいつ旅行から帰ってきてもいいように、家を掃除して、食事を作って、淡々と生活しています」 わずかな時間だけでも何かに没頭する時間をもつなど、亡き人のことを意識して「考えない」時間を作るのです。 そうすることで、どうしようもなくつらい時間を多少なりともやりすごせるかもしれません。