パリ五輪を見据えた平野美宇・張本美和ペアが抱える課題とは? 大藤・横井ペアに敗戦も悲観は不要
才能ほとばしる、大藤のさらなる進化
まず、今大会で大躍進となった、大藤・横井ペアの戦い方を見てみよう。 決勝戦。第1ゲームから、大藤・横井は猛攻撃を開始。両ハンドの切り返しが速く、韓国ペアを振り回すことができている。大量リードから、追いすがる韓国ペアを振り切り、11-9で取り切る。 第2ゲームは序盤でリードを許すも、横井の横回転、下回転を織り交ぜる巻き込みサーブが効き始めて、逆転勝ち。 第3ゲームは、田志希・朱芊曦がしぶとさを見せて取り返すも、第4ゲームでは、台上プレーの攻防が増え、前後の足の動きを速めた大藤・横井のスピードが際立った。 最後は横井のサーブから大藤がフォアハンドドライブを放ち、あっさり優勝を決めた。このパターンは、試合の随所に見られた。 サーブがうまい横井を、“うまく使った”大藤。 フォアドライブの強烈さが増した大藤を、“うまく使った”横井。 パートナー同士が、互いを信頼しているからこそ「うまく使う」。そういう戦い方ができていた。完成度の高いダブルス。そんな言葉が似合うコンビだ。 一方、平野・張本ペアの方は、どうか。
ゲームカウントは2-0。一見すると平野・張本が…
準々決勝で姿を消した平野・張本ペア。このペアの実力と完成度には懐疑的な声も上がっている。5月6日に行われたサウジスマッシュでも、パリ五輪の女子団体戦でダブルスを組むと思われるこのペアが1回戦で姿を消したことも不安の声を増す結果となってしまった。 平野美宇と張本美和。このペア、実際の実力は果たしてどうなのか。 確かに負けが込んでいるように感じるところはある。しかし、どの負け試合も接戦の末に敗れているという印象もあり、決してワンサイドで負けているわけではない。結果として、決勝戦より注目度が高くなったWTTコンテンダーザグレブの準々決勝の中身を見るとよくわかる。 まず、点数だ。第1ゲームは大藤・横井ペアを相手に14―12で競り勝っている。そこに「決定的な実力差」があるわけではない紙一重と言える接戦だった。そこから試合をひっくり返されていく。その過程で、何かが一つ噛み合わない。そんな印象だ。 第1ゲーム。大藤・横井ペアが、9-8に追いついていく場面が特に印象的だ。 大藤のバックスマッシュを張本が取れなかった。では、大藤のこのかなり大振りなバックスマッシュがなぜ決まったか。そもそもなぜここまで大きな振りの強打をできたのかとなると、「大藤に打たせるお膳立ての台上サーブ」を横井ができていたからだ。そこを平野が、当てるだけのレシーブ。それを強打した。取られた第1ゲームの中にも、こういう「パターン化」が随所に見られた。「これをして、相手にこれをさせて、こう決める」。そんな方程式の様なものだ。これがきちんと確立されていると、逆転もしやすくなる。 第2ゲーム。7-8になる場面ではラリーに。ラリーで相手を左右に振れるのも大藤・横井ペア。ここで、横井がサーブを出す前に、大藤が台の下に指を差し、このサーブを出してほしいとサインを出す。横井がこのサインの指示に応じて出したのは、下回転系のサーブ。当然、そこからツッツキ合いとなるが、平野が切れている下回転をなんとか攻めようとする。結果、持ち上げるだけのドライブになりを、それを、完全に“待っていた”大藤がバックミートで、軽くストレートに合わせるだけでカウンターが決まった。 この展開も、ほぼ予測して待っていたように見える。下回転系のやり取りからの展開を望んだのは、横井にそのサーブを出すようにサインを出した大藤だからだ。それでも、このゲームも11-9で平野・張本ペアが勝利。ゲームカウントは2-0で、一見すると平野・張本が大きなリードを取っているように見える。しかし、点数差は、連取したゲームどちらもギリギリだった。そして内容的には、むしろ大藤・横井ペアのほうがよかったようにも見えた。