人間椅子・和嶋慎治(青森県弘前市出身)が自選詩集 108編掲載、各時代回想のエッセーも
ロックバンド「人間椅子」の和嶋慎治(59)=青森県弘前市出身=が、新刊「無情のスキャット 人間椅子・和嶋慎治自選詩集」(百年舎)を出版した。5日、東京都世田谷区の「本屋B&B」で記念のトークイベントが開かれ、和嶋は日本語へのこだわりや創作の原点などを1時間半にわたりたっぷりと語った。 和嶋は多くの楽曲の作詞を担当。デビュー前から2023年までを8章に分け、全部で108編の詩を選んで掲載した。それぞれの時代を回想するエッセーも盛り込み、これまでの軌跡をたどる内容にもなっている。 「僕の作詞作法-バンド生活三十五年によせて」と題したイベントでは、文筆家・音楽ライター志村つくねが聞き手を務めた。和嶋は本のタイトルについて、当初は高校時代に創作した「鉄格子黙示録」と仮で付けていたものの、「出版社から『そのタイトルだと売れない』と言われた。(違う案が)すぐに思いつかず時間がかかった」と明かし、会場の笑いを誘った。 日本語は英語のように歌詞を縮めにくく、「日本語の古い言い回しや慣用句が良いのでは、と思い無意識にやり出した」と和嶋。それが他のバンドとの差別化につながっていった。今では海外のファンも増え「詩の核は内容がしっかりしていれば伝わる」と持論を述べた。 参加者からは多くの質問が寄せられた。一番歌詞が好きな作品を尋ねられ、和嶋がいくつか挙げた中に、友人の死に直面して書いた「星空の導き」があった。悲しみに暮れる中、「ただ悲しんでいてはダメだ、残された人を慰めたい」と素直な思いで書けた歌詞だったという。 イベントでは、高校時代にカセットテープに録音したラジオドラマ風の音源や、作品を書き連ねた古いノートも特別に披露。会場やオンラインで参加したファンらが喜びに浸った。 「無情のスキャット」は税抜き3千円。