トラフ建築設計事務所の鈴野浩一さんがミナ ペルホネン皆川 明さんのアートと1カ月暮らしてみたら?
ファッションにとどまらず、暮らしのアイテムや空間まで手掛けるデザイナーの皆川 明さん。創作はアート制作にも及びます。「誰かの暮らしの傍ら」にそっとあってほしいという皆川さんの思いをのせたアートを、今回4名のクリエイターの方々に預け、1カ月間暮らしていただきました。 『モダンリビング』No.277 「皆川 明さんのアートと1カ月暮らしてみたら…?」より、5回の連載でお届けします。トラフ建築設計事務所の鈴野浩一さんが皆川さんのアートと暮らしてみたら…? 【写真集】皆川 明さんのアートと1カ月暮らしてみたら…?Vol.2|トラフ建築設計事務所・鈴野浩一さん
CASE 1. 建築家 鈴野浩一さん
【フレームが重なる作品が格子柄の窓とリンクする】 「どこに置くか悩み、家のさまざまなところに飾ってみました。 皆川さんが僕らのことを想定して選んでくれた作品だから、なんだか手紙のようでうれしくて。結局、リビングに足を踏み入れるときに必ず目に入る場所に飾りました」と話す鈴野浩一さん。そのエッチング作品『石のウタ』は、自身でリノベーションした自邸のなかでいちばん目立つ場所に飾ったといいます。
“鈴野さんは既成概念の外から発想する人。エッチングに彩色をした唯一の作品を選びました” ─皆川 明さん
「形や大きさの違う12個の石がつながってフレームのような形を描いている。そのなかは空白なので、鏡のようでもあり、自分の好きなものが見えてきたりもする。想像力を刺激してくれる作品ですね」。 実は鈴野さん、「もっとカラフルな作品が届くと思っていた」のだそう。 「2007年にポップアップの展示ブースを担当させてもらったときから、皆川さんの色の感覚を僕らはすごく信頼しています。だから、今回モノクロの作品が来てちょっと驚きました。遠くから見ると白紙に見えるのに、近付いていくと虫眼鏡を使って描いたかのような細かいタッチでモチーフが描かれていて、よく見ると色もある。毎日眺めるたびに、いろいろな気付きがある作品で、どんどん好きになりました」
“皆川さんが僕らを想定して選んでくれた。そんな手紙のような作品に楽しさを感じます” ──鈴野浩一さん
「アートが人にもたらすものは大きい」と話す鈴野さん。 以前ミナ ペルホネンでテキスタイルデザイナーをしていた奥さまのメリンダ・パイノさんも「静かに座って眺めていると、皆川さんの思いが感じられます」とうなずきます。 ずっと前からそこにあったかのような作品のなじみぶりに、思わず笑顔になる2人でした。 =================== 【Profile】 鈴野浩一/1973年神奈川県生まれ。 東京理科大学卒業、横浜国立大学大学院修了後、シーラカンスK&H、カースティン・トンプソン・アーキテクツ勤務を経て2004年トラフ建築設計事務所を共同設立。 =================== 『モダンリビング』2024年11月号(No.277)より