万博の目玉「火星の石」は大人気だった「月の石」と比べインパクト薄め
辛酸なめ子のじわじわ時事ワード【火星の石】
2025年大阪・関西万博の開催が近づいています。目玉の一つとなる展示は、世界最大級の火星由来の隕石。その「火星の石」は、幅29センチ、高さは16センチで重さは約13キロもあります。何万年もの昔、火星から地球に飛来してきたもので、00年に南極観測隊が昭和基地周辺で発見しました。 【イラスト】大谷翔平選手の妻・真美子さんが持つバッグの抜群の宣伝効果はエルメス「バーキン」並み? 地球外起源の石といえば、1970年の大阪万博で、アポロ12号が持ち帰った「月の石」が話題を呼び、アメリカ館は待ち時間4時間以上の大行列になったそうです。そんなノスタルジックな思い出もよみがえります。 ただ、アポロが月で採取した石と比べると、地球に落下した隕石はインパクトが薄いという意見もあり、集客力が疑問視されています。石にも魂や意識があるとしたら、きっと展示期間中「えっこの地味な石が? 映えないね」「マンモスの方が良かった」など、心ない言葉を浴びせられ、怨念から呪物になってしまわないか心配です。 「火星の石」は国立極地研究所が所蔵する、約1万7000個の隕石コレクションのうちの一つで、その中で火星由来とされる石は15個、月が9個だそうなので、月の石の方が少しレア感が。でも、今回の火星の石は、火星に水が存在していたことを示す重要な資料でもあるそうです。火星の表層にある粘土鉱物が含まれていて、それは水と反応しないと存在しないものらしいのです。かつては水がたくさんあったと言われる火星がどうして荒涼とした大地になってしまったのか……。火星の石を眺めながら地球の環境についても考えさせられます。 実は火星由来の隕石は、極地研や国立科学博物館でも常時展示されているほか、天然石や鉱物を扱うお店では、パワーストーンとして、売っているところもあります。例えば、13億年前に火星に隕石が衝突し、衝撃で吹き飛ばされて地球に落ちてきた隕石を加工したというストーンは、直径約1センチで1粒数千円でした。生命力を高めたり潜在能力を開花させたりというほか、浄化といった効果が挙げられていました。 隕石はご神体として神社にまつられることもあります。そう考えると、巨大な火星の石は、近くに寄っただけでもご利益が得られそうです。触れる石のコーナーも予定されているとのこと。「今の時代に火星の石?」なんてバカにせず、火星の石を見るために長時間並ぶ純粋な人には、きっと良いことがあるでしょう。
冷凍マンモス
約20年前にもなる2005年の愛知万博の目玉は、「冷凍マンモス」。ロシア連邦サハ共和国で発掘された「ユカギルマンモス」の頭部の冷凍標本が来日し、約700万人が並んで見たと言われます。 1万8000年ほど前のマンモスの頭部は、永久凍土に埋まっていたおかげで保存状態が良く、皮膚の一部や毛も残っていました。混雑する会場で短時間しか見られなかった記憶があります。でも、その後日本科学未来館など、各地で再展示。「火星の石」も、混雑が苦手な人は待っていたらいつか他の会場で会えるかもしれません。(漫画家・コラムニスト、エッセイスト)