大谷翔平も実践…いまメジャーリーグで大流行する打撃理論「フライボール革命」の「意外な落とし穴」
アッパー気味のスイングで打球角度を上げ、ヒット確率を高める「フライボール革命」。近年、メジャーリーガーがこぞって取り入れている打撃理論だ。しかし一方で、三振の数も大きく増えているという。「フライボール革命」は、本当に万能なのだろうか? 「ミスタータイガース」と呼ばれた伝説の打者で、著書『掛布の打撃論』を上梓した掛布雅之氏が解説する。 【写真】す、すけている…全米も絶賛!大谷翔平の妻・真美子さん「衝撃のドレス姿」
メジャーリーガーが飛びついた打撃理論
近年、メジャーリーグでアッパー気味のスイングで打球に角度をつける打撃理論が推奨されました。「フライボール革命」という言葉が日本でももてはやされています。 打球速度が158キロ以上なら、26~30度くらいの打球角度の「バレルゾーン」と言われる領域が一番ヒットになる確率が高いというデータに基づいたものです。 なぜメジャーリーガーがこの理論に飛びついたかと言うと、球種や配球、守備隊形も含めた打者封じに対応するためです。近代野球では各打者の打球方向を分析して極端なシフトを敷くチームが増えました。 例えば、大谷選手の打席なら一、二塁間に内野手が3人守るというものです。シフトを破るには、守備陣の頭を越える打球を打てばいいというわけです(余談ですが、メジャーでは2023年から極端なシフトが禁止される新ルールができましたので、また違う打撃理論が出てくるかもしれませんね)。 メジャーでアッパー気味のスイングが多いのは、MLBの投手の球種の傾向に対応するためでもあります。MLBの先発投手は中4日での登板が基本のため、球数は100球ほどで交代します。だから、なるべく少ない球で打者を抑えていきたいわけです。 究極の理想は27球で27個のアウトを取ることでしょう。その大きな武器となるのがツーシームだとか、小さな変化でバットの芯を外す低めの変化球です。
「フライボール革命」の落とし穴とは?
私と同い年の江川卓氏と野球談義した際、MLBの投球傾向について興味深いことを話していました。 昭和の怪物と言われ、巨人のエースだった江川氏は81球で27個のアウトを取りたい投手でした。つまり、バットにボールを当てさせない球を放ることを目指していたと言います。 でも、今のメジャーの投手たちは三振を奪うより、初球でゴロを打たせてアウトに取りたがる。そういうバットの芯を外す小さく変化するボールに対応するために生まれたのが、アッパー気味にスイングするフライボール革命というわけです。 ところが、江川氏の分析ではMLBの一流どころの投手は質のいいスピンの効いたストレート、つまりフォーシームを投げはじめていると言います。アッパー気味なスイングでは本当に速いストレートは捉えられませんから。 つまり、その時代、その時代によって流行のスイング、流行の球種というのがあるのです。これは打者と投手のいたちごっこのようなものです。