11月FOMCのMinutes- Move gradually
先行きのリスク
FOMCメンバーは、インフレの上方リスクには変化がないが、雇用や景気の下方リスクは幾分(somewhat)減少したと評価し、ほとんど全員(almost all)がdual mandateの達成に向けたリスクは上下に概ねバランスしていると評価した。 インフレについては、地政学的リスクによるサプライチェーンの分断、金融環境の緩和、消費の拡大、住宅価格の高止まり、各種保険料といった上方要因を挙げた。景気については、数名(some)のメンバーが、世界経済の減速、地政学的緊張や資産価格の調整による金融環境のタイト化、労働市場の悪化といった下方リスク要因を挙げた。
金融政策の運営
これらの議論を踏まえて、FOMCメンバーは25bpの利下げを全会一致で決定した。その上で、今後のデータがインフレ率の2%目標への持続的収斂と最大雇用の維持と整合的である限り、金融政策をより中立的なスタンスに向けて時間をかけて緩やかに調整していくことが適当との理解を示した。 その上で、今後の政策判断には予定されたパスはなく、景気動向やそれらの経済見通しへの意味合い、リスクバランスに基づいて政策を決定する方針を確認したほか、足元の経済指標の不安定化を踏まえ、景気の基調に焦点を置くことの重要性も確認した。 リスクマネジメントの観点では、殆ど全員(almost all)が、 デュアルマンデートの達成に向けたリスクは上下に概ねバランスしているとし、数名(some)のメンバーは、景気や労働市場の悪化のリスクは減退したとの見方を示した。 また、金融引締めの解除が早すぎる場合と遅すぎる場合の双方のリスクを確認した上で、数名(some)のメンバーはインフレが高止まりした場合は利下げを停止すべきと主張した一方、数名(some)のメンバーは労働市場や景気が悪化した場合には利下げを加速すべきと主張した。 最後に、多く(many)のメンバーは、中立金利の水準に関する不透明性のため金融引締め度合いの評価が難しくなっているとし、従って、金融引締めの解除は緩やかにすべきとの考えを示した。 井上哲也(野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 チーフシニア研究員) --- この記事は、NRIウェブサイトの【井上哲也のReview on Central Banking】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
井上 哲也